ご当地フィギュア「諏訪姫」シリーズが、20万体超のヒットとなった理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2016年11月08日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「萌えおこし」を敬遠する自治体

 以前から「諏訪姫」の存在自体はなんとなく知っていたが、デビューから4年を経ていまだこれほど人気がある、ということに少なからず驚いたというか、意外な気がした。

 なんてことを言うと、「諏訪姫」ファンや諏訪市のみなさんに怒られるかもしれないが、「諏訪姫」がどうのこうのという話ではなく、「ご当地萌えキャラ」を用いた観光PR、いわゆる「萌えおこし」が全国的にみるとかなり厳しい戦いを強いられている現状があるからだ。

 「萌えおこし」はアニメの「聖地巡礼」現象が注目を集めた2011年ごろから本格的に盛り上がり、自治体や地方企業などがこぞって行う「ブーム」になった。

 しかし、ほどなく、ゆるキャラブームにおける、「くまもん」と「名もなきマイナーキャラ」の間に絶望的なまでの「人気格差」が生じるのと同じ構造的問題が発生し、「萌えキャラ」を華々しくデビューさせたものの、なかなかパッとせすに運営側のモチベーションが低下、売れない地下アイドルのように「引退」へ追い込まれるケースも増えていく。

 例えば、2011年に大分県内の18自治体それぞれの「萌えキャラ」をつくって観光PRに役立てるという「おおいた萌えおこしプロジェクト」も発足直後はマスコミに大きく取り上げられたが、それ以降はお世辞にも話題になっているとは言い難い状況が続いている。公式サイトの「TOPICS」欄は今年に入って2回しか更新がなく、公式Twitterも今年は3回しかつぶやいていない。気がつけば、開店休業状態になってしまっているのだ。

 これには、近年の「萌えおこし」に対する厳しい批判も無関係ではない。

 ご記憶に新しい方も多いだろうが、2014年12月、海女漁で知られる三重県志摩市が公認した海女のキャラクター「碧志摩(あおしま)メグ」に対して、海女の母親を持つ市内の主婦らが「前裾がはだけ、胸の形が分かる。女性を蔑視した性的な描写」だと批判。作者が公認撤回を申し出るという騒動が起きた。

 さらに、その1年後、ご当地キャラではないが、美濃加茂市のイベント「みなかもまるっとスンタプラリー2015」の告知用ポスターに、アニメ『のうりん』内に登場する巨乳キャラ「良田胡蝶(よしだ・こちょう)」が胸を強調させたポーズで掲載され、市民や女性団体からの抗議が殺到した。

 いくらクールジャパンだなんだと言っても、「女性性」を売り物にするとはけしからん――。このような萌えキャラがもつリスクがたて続けに顕在化することによって、「萌えおこし」を敬遠する自治体が増え始めたのだ。

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