ご当地フィギュア「諏訪姫」シリーズが、20万体超のヒットとなった理由スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2016年11月08日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「ゆるキャラ」にも必要な視点

 こういう試行錯誤は残念ながら、役所の人間には難しい。担当や部署がコロコロ変わるという組織の都合上、中長期的な事業計画を進めることができないのだ。だから、とにかくてっとり早く「結果」の出る施策に飛びつく。「ゆるキャラ」とか「萌えキャラ」はとにかくつくって活動をすれば、それが役所内の人事評価になる。最近多い有名人を起用した「地方PR動画」なんかもこれにあたる。

 役所にはない「事業」という発想があって、実際に継続させている――。「ご当地萌えキャラ」逆風の中で「諏訪姫」が4年以上も活躍できている最大の理由はそこにあるような気がしている。

 先日、四国初の開催となった「ゆるキャラグランプリ」では、高知県須崎市の「しんじょう君」が見事グランプリに輝いた。昨年、静岡県浜松市で開催されたときは、地元・浜松の「出世大名家康くん」がグランプリに輝いた。この傾向を見る限り、これからは開催地エリアの「ゆるキャラ」が持ち回りで優勝していく「ゆるキャラ業界の懇親会」のようになってしまうのではないかと不安になってくる。

 競争のなき世界で、人々の心をつかむキャラが生まれるとは到底思えない。そろそろ「ゆるキャラ」にも「経営」の感覚が必要なのではないか。

「ゆるキャラグランプリ」で、高知県須崎市の「しんじょう君」がグランプリを獲得

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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