2016年は誰が手にした? ノーベル平和賞なんていらない理由世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2016年11月17日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ノーベル平和賞は“中立”なのか

 そもそも、ノーベル平和賞というもの自体、よく分からない。他のノーベル賞(物理学、化学、生理学・医学、文学、そしてやはり物議を醸している経済学)と比べて、異質だと言っていい。

 基本的にノーベル賞受賞者は、スウェーデンのノーベル委員会によって決められるが、平和賞だけは違う。平和賞は、ノルウェー・ノーベル委員会が決めるのである。委員会のメンバーは、ノルウェーの議会によって任命される。現在の委員長は、ビジネスマンのノルウェー人女性で、保守党に属する政治家でもある。コロンビア政府とFARCの交渉にノルウェーが深く関与していたのも、サントスの受賞と無関係ではあるまい。

 ノルウェーは中立を主張しているが、「本当に中立なのか?」と疑わざるを得ないようなことが起きている。2012年に欧州連合(EU)が平和賞を受賞した際には、EUに否定的な選考メンバーが病欠している間に決定されたことで、物議を醸した。ちょっと古いが、1973年の平和賞は、米国のヘンリー・キッシンジャーに与えられた。理由は、ベトナム戦争を終結させたからだったが、実はその裏で、キッシンジャーはカンボジアなどで戦闘行為を行なっていた。結局、キッシンジャーの受賞をめぐり、委員会のメンバー2人が辞任した。

 さらにひどい例は、バラク・オバマ米大統領が受賞した2009年だ。オバマが米大統領に就任してから9カ月しか経っていないにもかかわらず、平和賞を受賞したので、彼自身も「驚いた」とコメントしている。しかも平和賞候補の締め切りがオバマ就任から10日ほど後だったことから、人物ありき、だったことが明らかになっている。当時のノーベル委員長も後に自伝で、その決定を後悔していると述べているくらいだ。

 ほかにも批判されている過去の受賞例は少なくない。ちなみにノーベル賞の授賞式は、平和賞のみノルウェーのオスロで開催される。とにかく、ほかとは一線を画しているのである。

2009年にノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領(出典:Nobelprize.org)

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