なぜ滋賀県は北陸新幹線「米原ルート」に固執するのか?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2016年11月18日 06時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 しかも湖西線には弱点がある。雪の多い地域で運行維持費がかさむ。西側の比良山地から吹き抜ける強風にさらされ、しばしば運休する。北陸新幹線は当初、湖西線ルートも検討されていた。しかしこの強風が懸念され、候補から外れた経緯がある。敦賀延伸後はフリーゲージトレインで湖西線を活用する案もあるけれど、フリーゲージトレイン自体がまだ不安定な仕上がりだ。

 このままでは、滋賀県は新幹線開業の恩恵がないまま、並行在来線だけを受け持つ形になってしまう。これは従来の並行在来線にはなかった形だ。青い森鉄道の青森県、IGR岩手銀河鉄道の岩手県、しなの鉄道の長野県など、今まで並行在来線を引き受けた自治体はすべて、新幹線による恩恵も受けられた。しかし、滋賀県だけは違う。

 北陸新幹線小浜京都ルートと小浜舞鶴京都ルートは滋賀県を通らない。並行在来線として滋賀県の湖西線は切り離される。滋賀県にとって、これは理不尽な話だ。滋賀県を通らない北陸新幹線に対して、滋賀県は建設費負担を拒否できる。これは通せる理屈だ。しかし湖西線の並行在来線化は迷惑だ。

滋賀県を明示してみた。小浜京都ルートが実現すると、新幹線計画として初めて、並行在来線との間に県境ができる 滋賀県を明示してみた。小浜京都ルートが実現すると、新幹線計画として初めて、並行在来線との間に県境ができる

 ならばいっそ、米原ルートにしてほしい。米原ルートで並行在来線となる北陸本線敦賀〜米原間の第三セクター化については許容する。こういう考え方になって当然である。

 北陸新幹線は小浜京都ルートが限りなく正解に近い。それでも米原ルートを推す滋賀県の真意を、与党PTは汲み取るべきだ。滋賀県を説得する材料は湖西線の処遇である。

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