「ロイホ24時間営業廃止」の正しい読み方スピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2016年11月22日 08時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングスが2017年1月までに24時間営業を廃止することを決定した。さらに、営業短縮に取り組み、定休日の導入も検討していくという。

 これを受け、マスコミは他企業の事例もひっかけ、「外食の24時間営業、縮小進む 深夜の利用客減 ロイホ撤退、マックは2年で半減」(朝日新聞 2016年11月19日)なんて感じで、外食業界の最新トレンドのような解説をしている。

 「人手不足で賃金が上がり、売上高がコストに見合わなくなってきている。深夜の利用客の減少も、営業時間の見直しにつながっている」(同紙)

 こういう外食産業の構造的問題についてはまったく異論はないのだが、これを言わんとするために「ロイヤル」を引っ張り出すことにはやや違和感を覚える。

 「24時間営業、縮小進む」もなにも、ロイヤルの24時間営業は全223店舗中わずか2店のみ。しかも、これは近年になってオセロゲームのように一気に塗り替えられたという話でもない。およそ30年前から成功と挫折を繰り返しながら続けてきた取り組みが、ここにきてようやく達成できたというものなのだ。

 というのも、実はファミレスの24時間営業を止めよう、という動きはかなり古くからある。例えば、1979年の第2次オイルショックの翌年には、政府が石油7%節約を掲げたことを受けて、農水省(当時)が、すかいらーく、ロイヤル、デニーズジャパンといういわゆるファミレス御三家に対して、外食産業が深夜営業自粛の模範を示してもらいたい、と営業時間の短縮を要請した。

 当時は各社24時間営業店舗が右肩上がりで増えていた。省エネよりも競争原理ということで軽くスルーされてしまったが、10年後に業界に衝撃が走る。

 なんと御三家の一角であるロイヤルが、「営業時間短縮」を掲げ始めたのだ。日経流通新聞の「ロイヤルホスト、効率化へ営業時間短縮」(1990年8月16日)という記事によると、当時で直営の約260店舗のうち、24時間営業を40%程度まで減らしたほか、午前2時までの店舗も午後11時までに短縮。これを年50店舗ペースで広げていくとした。実際に、同年12月には「24時間営業店の比率は23・7%と4分の1」(日本経済新聞 1991年2月24日)まで減少した。

ロイヤルホストは「24時間営業を廃止する」というが……(出典:ロイヤルホスト)
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