「ロイホ24時間営業廃止」の正しい読み方スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2016年11月22日 08時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

ロイホは先見性をもっている

 なにもマスコミを批判したいわけではない。単に「ロイヤル」という企業が、他の外食企業とは一線を画する卓越した先見性をもっている、ということを申し上げたいだけだ。

 事実、先ほどパートが集まらないで、店長の負担が大きくなるというのは、近年のファミレス業界で多く指摘されている問題だ。昨年末にも、外国人バイトが失踪し、ベテランパートが病欠したことで、それを補うようにひとりで働いていた店長が心臓発作を起こしたとして、労災に認定されたほか、会社側に損害賠償請求を提訴し話題となった。26年前に既にこういう危機意識を抱き、改革に乗り出していたというのは驚くべき先見性といえよう。

 ずいぶん持ち上げるじゃないか、と思われたかもしれないが、ケチのつけようがない過去の「実績」がある。例えば、今やファミレスだけではなく、他の外食チェーンやコンビニにも欠かせない「セントラルキッチン」は1960年代にロイヤルが考案した。氷の下で保存した冷凍食料を解凍して食べていた、というアムンセンの南極探検記からヒントを得たという。

 そもそも、今のファミレスの原型であるロードサイド(沿道)型の駐車場付きのレストランを発案したのも、外食企業で初めて上場したのも、大卒を初めて定期採用したのもロイヤルだ。客観的に見ても、この企業が常に時代の一歩、二歩、先を読んできたというのは明らかである。

 確かに、いろいろ初めての取り組みをやっているけど「24時間営業廃止」だって1990年代ってことだし、過去の栄光じゃないのと思う人もいるかもしれないが、近年でも先見性をいかんなく発揮している。

 例えば、ファミレスといえば、入り口で「禁煙席と喫煙席どちらがご希望ですか?」と尋ねられるのが「常識」となっているのが、ロイヤルホストはこういう質問はされない。喫煙者は店内の一角にある喫煙室で吸わなければいけない。食事をする空間は全席禁煙になったのだ。

 神奈川県の受動喫煙防止条例がきっかけで、2010年ごろから全席禁煙の店舗が増え、2013年11月に洋食ファミレス業界で初の全店禁煙を達成したのである。

 こういう話を聞くと、「禁煙ファシズムだ!」なんていきりたつ喫煙者が多いが、ロイヤルがこういう経営判断に踏み切ったのはそういうイデオロギッシュな話ではなく、実験を繰り返した結果、外食ビジネスにおけるメリットが大きいと分かったからだ。

ロイヤルホストの店内

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