出版不況の中、大手書店企業は増収 なぜ?大手出版・取次はマイナス傾向

» 2016年11月30日 16時41分 公開
[ITmedia]

 出版不況が続く中、出版社などの収入が落ち込む一方、売上高が100億円以上の書店運営企業は増収になっていることが帝国データバンクの調査で分かった。大手は電子書籍との連携やカフェの併設など、紙の本の販売という本業に加えて運営を多様化していることが背景にあるとみられる。

 出版関連企業(2528社)の2015年度総売上高は約4兆8867億円。前年度からマイナス3.6%、金額にして1805億円減少した。

 うち出版社はマイナス5.8%の1兆8927億円、出版取次はマイナス7.2%の1兆6354億円と落ち込む一方、書店を運営する企業は1兆3585億円と、4.8%のプラスに転じた。

photo 14年度比で書店運営企業はプラスに=帝国データバンクのニュースリリースより

 背景には大手の好調がある。書店運営企業の場合、売り上げ規模が100億円未満の企業は前年度比でマイナスなのに対し、100億〜500億円の企業(19社)はプラス1.8%プラス、500億円以上の企業(5社)はプラス23.4%と、規模の大きい企業ほど増収を果たしていた。

photo 規模が大きいほど増収=帝国データバンクのニュースリリースより

 帝国データバンクは「大規模な「書店経営」業者は一定の収益を見込める堅調な本業部門を持つだけでなく、書店へのカフェ併設や電子書籍とリアル書籍の連携、中古本や書籍以外の物品の扱いやポイントカードサービス、インターネットサービスなど、さまざまな試みが全体的な底上げにつながっているものとみられる」としている。

 反対に、出版社と取次は規模が大きい企業の総売上高が減少。雑誌や書籍の販売が落ち込んでいることが背景にあるとしている。

 帝国データバンクは「出版関連企業の業績が下降傾向にあることは変わらず、厳しい業界環境の中、減少傾向は続く」とみている一方、ベストセラーや書店の取り組みなど、「さまざまな仕掛けで今後は改善されていくことが期待される」としている。

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