理論で分かる きゃりーがブレイクした理由キャズム理論が進化している(4/6 ページ)

» 2016年12月02日 07時37分 公開
[永井孝尚ITmedia]

きゃりーはどうやってキャズムを超えたのか

 きゃりーの仕掛け人は、原宿にある芸能事務所の社長だ。この社長は世界に向けて原宿のカワイイ文化の情報発信もしていて、「カワイイ」が世界共通語になり、クールジャパンの代名詞になったのにも一役買っている。

 きゃりーのデビュー前から、原宿では青文字系ファッションが流行っていた。社長は「これを世界展開するとおもしろいんじゃないか?」と思っていた。そんなある日、社長はきゃりーと出会った。そこで社長はワーナーミュージック・ジャパンと組んできゃりーをデビューさせた。

 まずタイミングを見極めた上で、ライバルがいない市場を選んだ。当時、追い風が吹いていた。海外から原宿系ファッションが注目され、「カワイイ」が世界共通語になっていた。さらに他にライバルもいなかった。きゃりーは世界で原宿系カワイイ文化を象徴する唯一の存在だった。

 そして最初のターゲットを絞り込んだ。図の通り、イノベーターとアーリーアドプターにファンを絞り込んだのだ。

 そして絞り込んだターゲットを確実に攻略した。ターゲットのファンはきゃりーの登場を待ち望んでいた。デビュー直前にデジタル配信した映像や曲は、世界で大反響。ファンは熱狂した。原宿系カワイイ文化が世界で注目されはじめた絶妙な時期、その象徴としてデビューしたきゃりーは、原宿系カワイイ文化そのものになり、原宿系カワイイ文化が大好きな人たちは、きゃりーの登場に飛びついたのである。

 最初のターゲットを攻略した後は、ターゲットを切り替え、アーリーマジョリティまでファンを広げていった。

 きゃりーが世界的に有名になったのは、決して成り行きに任せた結果ではない。事務所社長は最初から世界展開を考えて、きゃりーを仕掛けた結果なのだ。

 詳しい話は、拙著『これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング』(永井孝尚著、SB新書)の第7章に書いているので、ご興味がある方はお読みいただきたい。

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