ちなみに、試乗後、CX-3の主査に確認したところ、問題の症状は把握していた。「あれってタイヤの縦ばねですかね?」と聞くと「恐れ入りました」とのこと。別に筆者に恐れ入ることはないので、それより何より直してほしい。主査の受け答えを総合すると、問題の振動原因を1つずつ当たっていったが解決せず、現在、消去法でタイヤではないかと考えているらしい。ただ、タイヤそのものは自社で作るわけではないので、直したいのは山々だが、多少時間がかかるのだそうだ。
これまで書いた通り、CX-3には自動車業界の見果てぬ夢である小さな高級車を実現できる可能性がある。もしデミオのガソリンモデルと同等の乗り心地とハンドリングを実現できたら、少なくともランチア・イプシロンと並ぶくらいにはなれる。それは歴代トップタイということだ。
クルマと見栄とエンジニアリング。その3つは常に関連しながら変化し続けている。今回だって話は簡単なのだ。デミオのガソリンモデルなら、小さいのにかなり上質と言えるものになっている。そこに買う側の見栄の心さえなければ。
しかし、人はそうそういつも合理的にはなれない。やはり周囲から「安グルマ」と思われるのが嫌だから、「いや、これディーゼルだから」とか、そもそも外観が安グルマに見えないCX-3を選びたい。そういう人が根源的に持つアンビバレントを解決してあげることがCX-3の使命なのではないか?
CX-3には大きな期待をしている。そしてデミオのガソリンモデルにはもっと高い評価が得られるように祈っている。せっかくの良いクルマなのだから、実力なりに評価されるべきである。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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