カルビー、ジャガイモ新品種開発のわけ:「ぽろしり」誕生に10年以上(3/3 ページ)
では、どのようにぽろしりは開発されたのだろうか。
10年以上かけて開発(写真提供:カルビー)
そうか病に強いとされていたジャガイモ品種「ノーキングラセット」を母、シストセンチュウに抵抗性のある「Pike」を父として、2003年に人工交配を開始。生育して花が咲き、そこから獲れた種を再びまき、新しいジャガイモを作り、その中から最適なものを選んでいく作業を繰り返し行った。2004年の播種(種まき)数は約1万1000粒で、それ以降播種数は増加、2016年は約3万5000粒の種子を播種した。種のサンプルが増えれば増えるほど、分析する項目も増していき、最終的に高い評価を得たジャガイモがぽろしりとして誕生した。なお、ぽろしりは十勝幌尻岳(とかちぽろしりだけ)にちなんで命名された。
ただし、ここで終わりではない。商品の原料として使えるよう栽培を普及させるためには、北海道の農作物優良品種に認定されなければならない。北海道農作物優良品種とは、収量や病虫害抵抗性、品質などで栽培上、利用上の重要な特性が総合的に優れているかどうかを審査するもので、ぽろしりはそのための試験を2012〜14年の3年間かけて行った。そして見事クリアし、2015年2月に優良品種に登録されたのである。
新品種ができたのでカルビーの抱える課題が解決できたわけではない。実はジャガイモの品種開発は常に行い続けているのだという。2015年には、今まで国内では未発生だったジャガイモシロシストセンチュウが北海道網走市内のほ場で確認され、関係者は対応を迫られた。
ぽろしりの花(写真提供:カルビー)
このように新たな害虫や病気が発生する事態は付きまとうので、それを防ぐための対処は常にしておかなければならない。津山課長も「品種開発の継続は不可欠」だと強調する。
ぽろしりを使用したポテトチップス商品は、現在は収量が少ないため、北海道エリアなど地域限定で販売されているそうだが、普及に伴って近い将来、全国の消費者の口にも届くことになりそうだ。
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