模倣店が増えても、QBハウスも増えるワケ水曜インタビュー劇場(散髪公演)(3/6 ページ)

» 2016年12月07日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

日本のシステムを海外に

松本: 日本では国家資格を取得している人ばかりを対象にしていますが、10分で髪の毛を整える作業って難しいんですよね。対象は学校を卒業したばかりの人だけでなく、かつてこの業界で働いていた人も。最初は会社の経営理念などを学び、その後は、ハサミ・クシの持ち方、切り方などを学んでもらう。カリキュラムは朝から晩まで、期間は6カ月間ですね。

 理美容業界の場合、多くの人はいわゆる“下積み”を経験するんですよね。同じ店で働く先輩の姿を見て、技術を盗むといった感じ。営業時間中に髪をカットするのは難しいので、自分の技術力を高めるには営業時間外にウィッグ(かつら)などを使って練習しなければいけません。

 ここで問題がひとつ。同じ店で働いている先輩の技術力が高く、教えるのが上手であれば、新人の技術はめきめき上達するでしょう。ただ、技術力が低く、教えるのがうまくなければ……そうした環境で若い人が育つのは難しい。当社の場合、そうした仕組みをとっておらず、入社すれば「朝から晩まで学校で学ぶ」といった形ですね。

土肥: 日本で行っているシステムを海外に持ち込んだわけですよね。でも、そのままではうまくいかないような。というのも、先ほどもおっしゃっていましたが、海外には国家資格がないので、技術力に違いがありすぎる。となると、教える側も大変なような。

松本: ご指摘のとおり、技術力に違いがあるので、教育するうえで日本とは違った苦労がありました。例えば「私、スタイリスト経験が10年あります」という人がいたので、こちらもかなり期待しました。「10年もやっていれば、かなり上手かなあ」と思っていたんですよね。ただ、実際にカットしてもらったところ、その人にはヘンな癖が身についていました。なぜかなあと思って、理由を聞いたところ「前に働いていた店はこのようにやっていた」と言うんです。

 海外には、このような人がたくさんいるのです。でも仕方がないですよね。カットの技術を学ぶ場は、働いていた店しかありませんので。また、美容院では予約制のところが多い。いわゆる常連さんが多いので、そのお客さんがどういった髪質で、どういった髪型を好んでいるのかは、長く働いていると分かってきますよね。一方、当社の場合は違う。予約制がないので、ほとんどのお客さんはいわゆる“いちげんさん”。初めて来られる人の髪を10分で仕上げなければいけない。これって、想像以上に難しいことなんですよね。

 ただ、基本的な技術力はあるので、コツさえつかめば上達のスピードも速いです。ちなみに上達が速い人は、性格が素直なタイプが多いですね。「どんなことでも修得しよう」「できるだけ早く一人前になろう」といった意識があるので、その人は“成功体験を捨てる”ことができるのではないでしょうか。

香港にあるQBハウス

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