「狂犬」国防長官は日本にとってマイナスか世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2016年12月08日 07時17分 公開
[山田敏弘ITmedia]

日米関係にどう作用するのか

 そんなマティスだが、日米関係にはどう作用するのか。結論から言うと、彼の指名は、日本にとっては警戒よりは歓迎すべきだと言えそうだ。

 もちろん、経歴的に見ても、マティスが専門である中東に重きを置くのは間違いないだろう。ただ国防長官として世界を見ることを考えれば、中国の脅威も放っておけないし、南シナ海や東シナ海の問題を軽視することもないだろう。

 マティスは2015年1月27日、米議会で中国の影響力に対してこんな証言をしている。「われわれの、太平洋地域で中国とポジティブな関係を維持しようという取り組みはうまくいっているし、いいことだ。だが中国が南シナ海やそのほかで、いじめのような強硬路線を拡大していくなら、現在のわれわれの取り組みと並行して、中国に対抗するための政策を構築して行く必要がある。その対抗策は、われわれの経済にとって重要な安定と経済的繁栄を維持するための外交的な取り組みであり、太平洋地域の領土問題や安全保障、経済状況に対する中国の拒否権を否定できるものでなければならない」

 現時点で、政治や外交の経験がないトランプの外交政策は発言が一貫してないために、正直言うと対中関係がどうなるのかはよく分からない。ただおそらく、マティスの見解から、中国の強引な海洋進出などに対してはきちんと対策していく可能性は高い。

 このように、きちんと政策が定まっていないトランプが、マティスのような側近から政策面などで大きな影響を受けることは大いにある。事実、その兆候はすでに見られる。例えばトランプはこれまで、米中央情報局(CIA)が捕虜などに行ってきた拷問を支持する考えを明らかにしていたが、実はマティスとの話し合い後に、拷問について考え直すような発言を始めている。またトランプがイスラム教徒の入国に批判的な発言をしているのはよく知られているが、米メディアによれば、マティスはそれに反対する立場であり、トランプの考え方を再考または多少中和するような影響力を与える可能性があるという。

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