多発した謝罪の場面で、私のところにはさまざまな取材や相談をいただきました。中でも「炎上したらどうするか」というものは芸能人、著名人、企業などが常に抱えるリスクとして大きなものだと思います。しかし炎上してしまった炎を消すのは容易ではありません。現実のリスクコントロールは、とにかく炎上するリスクを減らすことに尽きます。
火事とスキャンダルは似ています。海外の山火事などを見ていると、延焼して何日も何週間も燃え広がるものがあります。山火事でも、初期消火であれば何とかなることはあっても、燃え広がった後では化学消防車やヘリコプターでももはや手遅れです。
今、吉本興業はこの瀬戸際にあるといえるでしょう。事件をなかったことにはできませんし、まだ報道は錯綜していますが「逃げた」のか「気付かなかったのか」は、真実が何であったかを問わず、本件のキモです。
事態をわずかでも鎮静化に持っていくのであれば、「逃げた」ことを認め、自らの愚かさを訴えるしかないといえます。「自ら認めれば許される」という意味ではなく、そこを逃げ通すことは不可能だからです。「逃げなかった」ことを証明するのは悪魔の証明であり、不可能なことです。「逃げたことは証明できなかった」という主張は絶対に聞く耳を持たれません。
井上氏にわずかな望みがあるとすれば、それはポジティブキャラだと思います。もし氏が「当て逃げをした」「芸能界の立場を失うのが恐ろしかった」「自分の人生が崩壊することを何とかごまかそうとした」という感情を持ったのであれば、そう語ってはどうでしょう。
人間、特に成功者となったスターが、その愚かで醜い部分を吐露するのは簡単なことではありません。しかし人間の本性にある悪や、ずるさ、醜さは誰もが持つものでもあります。それを正面から認めることはとんでもない勇気が必要です。
被害者の方には会社も含め十二分な補償をした上で、ご自分の弱さや醜さを今の時点であらわにする会見ができるなら、これまでブサイクなのにポジティブという特異な姿勢が評価されてきた氏の存在は、何年後か何十年後かに再び復活できる可能性を残せるのではないかと思います。
要は事態をごまかしたり、正当化したり、真実が何であるか調査を待ったりせず、直ちに自らの過ちと愚かさを全面的に認め、芸能活動を辞めることで将来の復活の道筋にもなり得るということです。今正にその決断の時といえるでしょう。(増沢隆太)
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング