「ディスっても大丈夫」法が成立、書くよ!世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2016年12月22日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

何を書いてもいいということではない

 こうした口コミへの圧力が、消費者の正当な権利を侵害しているとして、「消費者レビュー公正法」が法制化されたのである。もちろん店やサービスなどを提供する側が、できれば批判的なコメントを排除したいのは理解できる。だが口コミのプラットフォームを提供してきたイェルプは、「2004年の立ち上げから、私たちは消費者の言論の自由を守る手助けをしてきた。消費者はビジネスと接する中で自分たちの体験についての意見を共有する権利をもっている」との声明を発表している。消費者が情報を共有する権利を守るほうが、消費者にとって公正だということらしい。

 確かに情報の共有は価値があるが、米国の口コミサイトでは、日本と比べても辛辣(しんらつ)なコメントが多い印象をうける。医師個人を名指しして誤診されたとコメントが書かれるケースも少なくなく、医師にしてみればとんでもない言いがかりになっている場合もある。日本と違って州によって数年に1度は医師免許を更新する必要のある米国では、根拠のない悪評だったとしても問題視されてしまう可能性もないとは言えない。

 最近では、医師側が悪い口コミを書いた患者の個人情報を含めながら反論・説明のコメントを載せて反撃するケースも出ている。患者側は個人情報が明らかにされたと憤慨するなど、口コミする側とされる側で、収拾のつかない泥仕合の様相になっている場合もある。こうなると、誰も得しない。

 ただもちろん、「消費者レビュー公正法」にも例外はあり、何を書いてもいいということではない。秘密情報を保護する法的義務がある場合や、名誉毀損または誹謗中傷に該当する場合は対象外となる。

 ちなみに米国では、イェルプそのものもビジネス手法が批判されている。イェルプは、批判的なレビューで評価の「星」の数が少ないお店などに積極的に広告を行うべきだと営業していることが指摘されている。星の数を「改善」させられるとアプローチする場合もあるという。つまり評価が低いとイェルプには金になることになり、否定的なコメントを「悪用」しているとの非難も上がっている。また、実はイェルプ自身がレビューの採点を操作しているとの批判もあり、過去には何度もイェルプ自身が訴えられている。

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