それでいいのかホンダ!?池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2016年12月26日 06時45分 公開
[池田直渡ITmedia]

 筆者は販売力を原因とする見方に否定的である。八郷社長の「商品力重視でホンダらしさを取り戻す」と言う発言にこそ真実が潜んでいると思う。その言葉の中にはっきりと商品力という言葉が軸として置かれている。商品力はあるのに販売力が足りないのではなく、足りないのは設計リソースだ。

 ホンダは現在いかなるアライアンスにも参加せず、独立独歩の道を歩んでいる。にもかかわらず、エンジンが10機種以上(数え方による)もあり、下は軽自動車からレジェンドやNSXといったフラッグシップまでラインアップし、ミニバンマーケットにも参画し、さらにハイブリッドと燃料電池もカバーするという具合で、トヨタ並みの広範囲戦線を展開中だ。

 常識的に考えて戦線の拡大し過ぎである──と言いたいところだが、日米欧の旧三極に加えて、中国、ASEAN、インド、南米、アフリカといった今後の伸び代のある新興国マーケットにはアクセスしておきたい気持ちも分かる。しかし、そのためには世界各地で求められる多種多様なクルマを開発し続けることが必要なのだ。

 北米はどうか? ホンダに限らず日本のメーカーは北米に強い。日本と北米は会社の屋台骨を支える売り上げの重要な戦略拠点だから、何があっても止められない。ところがその北米で戦うためには、巨大なドメスティックマーケットである米国に合わせた製品が必要になる。

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 具体的に言えば、SUVやDセグ以上の中大型セダンだ。北米で売れ筋の商品の半分は他国では売れない。SUVは大きくなければ他地域でも売れるが、他地域でのセダンはもう凋落(ちょうらく)を指をくわえて見るばかりのありさまだ。アコードは日本ではハイブリッド専用になったこともあり、まず見掛けることが少ないが、北米では2015年の車名別販売実績で第5位を獲得している。北米でしか売れないとしても作らざるを得ない。

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