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» 2017年01月10日 06時00分 UPDATE

“いま”が分かるビジネス塾:AIに投資を任せる時代 市場はどう変わる? (3/3)

[加谷珪一,ITmedia]
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AIが投資に対するハードルは下げてくれる?

 AIを使った投資ツールであれば、今まで人間が見逃していたごくわずかな裁定チャンス(理論的に同じ価格の投資商品に瞬間的に生じた価格差を利用して利益を上げること)も発見し、すぐに実行に移すことができるだろう。だが、それはどのAIでも同じことであり、こうした裁定チャンスは一瞬で消滅してしまう。

 あらゆる裁定チャンスが消滅した先には、理論的には市場そのものが持っているリスクしかリターンの源泉は存在しないことになる。これはほとんどの投資がインデックス投資(積極的なリターンを追わず、市場全体の指数に連動する形で投資する手法)になってしまうようなものである。

 あるAIが全く新しいアクティブ運用(市場の平均リターン以上の収益を狙う積極的な投資)の手法を考案したとしても、別のAIがたちどころにその成果を学習し、同じような手法を多くのAI投資がマネるだろう。つまり、ここでも裁定取引が行われてしまい、結局のところ、一つの手法は長続きしない可能性が高い。ある瞬間は市場が乱高下することがあるかもしれないが、比較的短時間で一定水準に平準化されてしまう。つまり、市場全体としては金融理論における効率的市場に近づくことになる。

 少しつまらない予想かもしれないが、これは多くの人にとってむしろ朗報である。過剰な不安心理から大きな損失を出す可能性が低くなるだけでも投資に対するハードルは下がる。大きくもうけなくてもよいので、着実に投資の成果を上げたいという人にとって、AI時代の到来は喜ぶべきことだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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