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» 2017年01月10日 06時45分 UPDATE

池田直渡「週刊モータージャーナル」:新型スズキ・スイフトが国内外に与える影響 (3/3)

[池田直渡,ITmedia]
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世界で戦うための技術

 では、この新車投入をグローバルで見たときはどうなるだろう? 新興国の経済成長は速く、当初アルトベースのミニマムカーでスタートしても、経済発展に伴って販売主力は上にシフトしていく。つまり、新興国戦線はAセグメントのアルトベースからBセグメントのスイフトベースに移る可能性がある。前述のバレーノやイグニスといったクルマがリリースされたのは、日本国内に限って言えば軽自動車税ショックへの対応だが、グローバルに見たときは少々絵柄が異なるのだ。

グローバル戦略エンジンの1つである直噴ターボユニットをスズキでは「ブースタージェット」と名付ける グローバル戦略エンジンの1つである直噴ターボユニットをスズキでは「ブースタージェット」と名付ける

 スズキは既にインドにエンジンとトランスミッションの専用工場を立ち上げ、最新の過給エンジンや直噴エンジン、マイルドハイブリッドなどの現地生産に着手している。これによって先進国仕様のパワートレインを新興国に投入できるようになった。一般的に環境規制は先進国の方が厳しいと思われているが、既に実態はそうではない。むしろ自動車生産国では自動車メーカーの都合もあって規制の厳格化が難しいことがあり、その結果、むしろ自動車を生産しない国の方がより厳しい環境規制を実施している場合も少なくなくなってきている。どうせ輸入するなら環境性能の高いクルマだけ買った方が良いからである。

 つまり今後も新興国マーケットをリードしていこうと思えば、環境性能の高いエンジンや燃費性能に貢献するトランスミッションが欠かせない。なおかつそれらは高度な整備技術のないマーケットで維持できるものでなくてはならない。型遅れモデルを適当に売っていれば良いという認識では既に新興国戦略は成り立たない。スズキのエンジン&トランスミッション工場建設は次のステージへの備えを見越したものである。

 さて、そうした環境下で、新型のスイフトはかなり練り込んだ戦略を持って登場した。前述した最新の直噴ターボユニットや直噴エンジン、マイルドハイブリッドなどは当然投入されるのだが、最も大きいのは軽量化である。

 スズキは、2014年にアルトをフルモデルチェンジし、シャシーを完全に刷新した。このとき世間を驚かせたのはクルマの軽さだ。アルトは最軽量モデルでわずか610kgという数値をマークした。ここ最近1トンに迫りつつある軽自動車の常識を大きく覆したのである。環境性能は当然負荷によって変わる。複雑なメカニズムを投入すればメインテナンスの問題が起きるが、軽量化ならどんなにインフラがない国であっても整備の問題が起きない。アルトの場合、シャシーの骨材をできる限り直線的に、あるいは曲げ部分を穏やかにしたほか、サスペンションをマウントするサブフレームを薄型化して、これをシャシーの補強に使うという手段を取った。驚異的な軽量フレームはこれらの成果である。

軽量化のキーとなる新プラットフォーム。近年プラットフォームに名前を付ける傾向に則り、スズキでは「HERTECT」と呼称する 軽量化のキーとなる新プラットフォーム。近年プラットフォームに名前を付ける傾向に則り、スズキでは「HERTECT」と呼称する

 スイフトのモデルチェンジでもこのノウハウは生かされ、先代モデルに対してなんと120kgもの軽量化を果たした。これによりシステム構成上重くなりがちなハイブリッドモデルでさえ900kgに収め、最軽量のXGグレード(FF/MT)では840kgを実現している。ちなみにCVTが約30kg増、フルタイム4WDが約90kg増となる。いずれにせよ、この車両重量は近年希に見る数値で、さまざまな可能性を感じる。グローバル戦略に基づいた軽量化だが、当然走行性能も向上する。国内のクルマ好きにとっては走りの面でも極めて価値のあるモデルになるだろう。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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