反対運動の日当は、なぜ「2万円」だったのかスピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2017年01月17日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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世に溢れる報道や情報は何者かの「意図」が隠されている

 冒頭で申し上げたように、デマを流す者は、デマの中に己の感覚で「事実」と思しき要素をちりばめる。そこで想像してほしい。新基地建設にまつわる「業務」で2万円や5万円といった「日当」を支払うことが常識となっている人たちが、「反対派が日当をもらっている」というデマを流そうとしたとき、彼らの頭には、どんな「相場」が浮かぶのか、を。

 座り込みやシュプレヒコールは船長のような特殊技術ではない。工事用トラックや機動隊の動きに目を光らせているということでは、警戒船に同乗する「警戒員」とよく似ている。きっと彼らもそれくらいの日当をもらっているに違いない――。

 つまり、反対派がもらっているという「日当」が、世間の日雇いバイトの相場や、市民運動の「実費」と大きくかけ離れた「2万円」になったのは、辺野古沖の「警戒員」の「日当2万円」にひきずられている可能性があるのだ。

 いろいろ言ってみたものの、来週にでも『文春』や『新潮』に「A氏」のような人物が登場し、高江の座り込みバイトのおかげでウハウハです、なんて告白記事が掲載されるかもしれない。

 ただ、もしそうなっても、そこで語られる証言の細部にまで目をこらしていただきたい。週刊誌だけではなく、「告白記事」は総じて告白者の「意図」が隠されている。もちろん、単純に「謝礼が欲しい」から協力する人もいる。しかし、これまで記者をやってきた経験で言わせてもらうと、取材に協力することで、自分や自分が属する組織・勢力になにかしらの「得」を手にする人がほとんどだ。

 そこで思う。基地反対集会や座り込みのバイトで暮らしているという「A氏」の「得」とは果たして何だったのか――。情報操作の観点からみると、「プロ市民はバイト代をもらっている」という風評は非常に興味深い。事実なのか、デマなのかも含めて「日当2万円」報道の今後に注目したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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