「同一労働同一賃金」は、新しい実力主義モチベーションの低下を防げるか(2/2 ページ)

» 2017年02月01日 05時30分 公開
[川口雅裕INSIGHT NOW!]
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 「同一労働同一賃金」は、新しく登場した処遇制度をシンプルにするためのコンセプトと捉えることができる。業績や能力の評価が難しいのは依然として変わらないが、勤続年数や新卒入社・中途入社、正規・非正規、家族・資格・勤務地などによって変わる複雑な報酬の仕組みを、担当している仕事の質・量・難易度・責任といった基準で決めるように促すものだからだ。

 「公平」以外に軸となる思想がなく、その結果、複雑で個別の手当の意味などの説明が難しくなっている現在の処遇制度に比べて、一本の筋が通ったシンプルな仕組みになることが期待できる。また、処遇が不安定になることもないから、モチベーションの向上にもつながる可能性がある。

 「同一労働同一賃金」は、新しい実力主義とも言えるだろう。本来、仕事に関係のない要素を、報酬を決める根拠から外すという点は同じ。

 違うのは、おおまかに言えば、業績(結果)に連動させるのではなく、労働の内容(プロセス)に連動させるという点だ。プロセスは結果ほどには大きく変動しないから、「同一労働同一賃金」は「報酬を比較的安定させることができる実力主義」なのである。

 今後を考えると、労働者の属性・状況が多様化していくので、処遇の公平を期すための継ぎはぎには早晩、限界がくる。仕事に関係のない要素で報酬を決めるのも、理解されなくなるだろう。

 そもそも「同一労働同一賃金」は先進諸国の常識で、これにいつまでも抗えるとは思えない。現行が、差別的処遇であると言われて言い返すのが難しいのも事実だ。何が同一労働かという難しい議論は継続して検討する課題とした上で、早めに「同一労働同一賃金」の思想を取り入れた処遇制度を導入するのが得策ではないだろうか。(川口雅裕)

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