大谷のWBC参加断念の裏に、大人の事情赤坂8丁目発 スポーツ246(3/3 ページ)

» 2017年02月10日 07時44分 公開
[臼北信行ITmedia]
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小久保監督の起用法に警戒

 一方で、こんな怪情報も米球界ではまことしやかにウワサされている。「右足首負傷がブラフとまでは言わないが、たいしたことのない軽傷レベルで3月の試合出場が十分可能であったとしても日本ハム側は“ケガ”を理由に大谷のWBC出場をストップさせていただろう」という声だ。

 前出の関係者を含め他にも同様のことを指摘しているスカウト、あるいはフロントの人間が複数いた。それが事実かどうかは分からないまでも、日本ハム側が侍ジャパンの小久保監督ら首脳陣に大谷の起用法についてやや疑心暗鬼になっていたところは多少なりともあったようだ。つまり非常に起用法が難しいとされる二刀流・大谷を侍ジャパンがうまくコントロールできるか否かに対し、最後まで懐疑的な要素を日本ハム側が排除できなかったということである。実際に日本ハムの球団内からはそういう指摘も出ていたことから、米球界でのウワサはあながち間違いではないかもしれない。

 特に小久保監督には2015年11月に行われたプレミア12の準決勝・韓国戦で「継投ミス」を犯したイメージがこびり付いてしまっている。最近になってこそネット上での小久保バッシングはようやく沈静化してきたが、日本ハムが同じように小久保監督の起用法に警戒心を抱いていたとしても何ら不思議はない。

 「大谷の二刀流をきっちり使いこなせるのは、日本ハムの栗山(英樹)監督のみ。入団当初からフロントと表裏一体となって育成プランを練り、それを実行させてきた。だから数日やそこら一緒にやったからといって他の監督が簡単に大谷を二刀流として起用することはできない。投手あるいは打者のみという形だけならば、小久保監督でもOKだっただろうが……。

 日本ハムとしては今度のWBCでプレミアの準決勝の時のように『ミス』によって大谷が二刀流で必要以上にフル回転させられるのが一番怖かった。このWBCで大谷がぶっ壊れでもしたら、次のオフでメジャーリーグ移籍の可能性はゼロになる。いや来年以降も永遠になくなってしまうかもしれない。

 しかも日本ハムとしては新球場建設構想も進めていて巨額の資金が必要なことから、大谷をタイミングのいい“売り時”に移籍させてポスティングシステムによる高額の譲渡金(最大2000万ドル=約22億3500万円、今秋に金額が見直しとなって増減する可能性もある)を手にしたいと考えている。

 それがゼロになってしまうのはかなり痛い。実はメジャーもそこまで大谷のWBC出場を望んでいないと日本ハム側が知り『それならケガもしているし、無理して出てもメリットはない』と本人に言った流れは大いに考えられるだろう」(日本ハムOB)

 大谷のWBC参加断念のウラには、見えない駆け引きが繰り広げられていたことは間違いなさそうだ。

臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:

 国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。

 野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。


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