レクサスが販売台数を伸ばしているのは、こうしたブランディング活動だけではない。当然、クルマという商品そのものにも磨きをかけた。
その代表例が2012年から採用しているスピンドルグリルデザインだ。これを全車種に取り入れたことで、一目でレクサスブランドのクルマだと分かるようになった。
2013年には約7年半ぶりに中型セダン「IS」シリーズをフルモデルチェンジしたことで、それが欧州車と肩を並べる評価を受けるようになった。また、2016年1月に「デトロイトモーターショー」で新型ラグジュアリークーペ「LC500」、およびそのハイブリッドモデル「LC500h」を発表したことで、今までは見られなかった顧客層が関心を示すようになったという。従来のセダンやSUV(スポーツ用多目的車)といった実用的なクルマだから買うのではなく、クーペならではのエモーショナルな走りを求めるような層だ。
「クーペやスポーツタイプのFモデルがレクサスの商品に追加されたので、クルマ好きという顧客層も格段に増えました。これまではセダンのラインアップが多く、他メーカーと比べると選択肢が少なかった面があります。この数年間で充実したのは大きいです」(宮永氏)
加えて、レクサスの売り上げ全体をけん引しているのがSUVだ。もともと高級クロスオーバーSUVというセグメントを切り開いたのが「RX」で、そこから他社が追随してきたという歴史がある。現在は、RXよりも少し小型の「NX」、そしてRX、LXのSUVモデルでレクサスの全販売台数の約6割を占めるほどの主力となっている。
トヨタは今、「もっといいクルマづくり」という理念を掲げている。この理念はレクサスにとっても変わらない。その上でレクサスが求めるのは熱狂的なファン作りだ。
「よく福市(得雄レクサスインターナショナルプレジデント)が言うのは、『このクルマを本当に愛してくれる人が買ってくれればいい』。例えば、スピンドルグリルは深海魚みたいで嫌だという人もいますが、一方、このデザインに惚れて買ってくれる人もいるのです。とりわけラグジュアリーブランドは、誰もが好きになってくれる中庸なデザインではなく、好き嫌いがはっきり出るようなものでないと駄目だと思っています。そうでないと熱狂的なファンは生まれません」(宮永氏)
今後さらに販売台数を7万、10万と伸ばしていくのではなく、レクサスというブランドを愛してやまないファンを一人でも多く作っていくことの方が優先度は高いという。顧客の数よりも質。それこそがライバルメーカーとの競争に勝ち抜くための近道でもあるのだ。
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