業務効率の向上で長時間労働は解消できない年間労働時間は2000時間前後(2/2 ページ)

» 2017年03月13日 07時25分 公開
[川口雅裕INSIGHT NOW!]
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 第三に、早く会社を出ても、特にすることがない人が多いからだ。さまざまな国際比較調査では、日本人はスポーツ・自己啓発・学習・地域活動への参加など、仕事以外の活動状況や意欲が低調であると報告されている。もちろんこれまでの長時間労働がそれら活動の障害になってきたという面もあるが、仮に今、年間労働時間が2000時間から1800時間になったとして、200時間を費やしたいと思えるようなことを持っている人は多くないだろう。やることがないなら早く帰る意味がないから、労働時間は減っていかない。

 長時間労働の解消には、業務の効率化だけでなく、これら3つの問題を解決する必要がある。それには、個人個人の能力開発が重要だ。組織は一人当たりの業務量を鑑みて人員を調整するから、業務量は常に一定である。一定であり続ける業務量をより短時間で仕上げるには能力を向上させるしかない。残業代を稼がなければならないような定型的な業務や、上司の管理下で指示を受けながら働く階層から抜け出すにも、能力の向上しかない。会社の仕事以外の活動を楽しむのも、充実した人生を創る能力であり、その力や活動で得られた経験は仕事にも大いに生かされるから、短時間で成果を上げることができるようになる。

 長時間労働の解消は、ITなどによる業務効率化はもちろん、ノー残業デーなどの労働時間制限、有給休暇の取得促進などではなかなか実現できないだろう。企業が長時間労働を解消するには、遠回りのようでも、結局のところ個々の能力開発への投資が欠かせないのである。(川口雅裕)

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