さて、この新しいプランを進めていくために欠くべからざる要素が、トヨタのTNGAにあたるダイハツのDNGAだ。
これはTNGAと同じく、経営基盤の体質改革だ。働く人々の知識や意識改革から始まって、組織、事業計画、設備、設計、部品調達、生産技術、生産過程、販売までクルマ作りと販売のすべてをあらためて強靱化することが目的だ。外乱に強く、常に進化して市場の変化についていけること。当然そういう会社であるためには、商品そのものの魅力も高くなくてはいけない。ダイハツはこのTNGAが掲げる思想に「軽を原点としたコンパクトカー」を付加して、DNGA構想としている。
まずは基礎を確立した上で、2020年の東京オリンピックまでには第一弾としてDNGA世代の軽自動車をデビューさせる。生産台数も現在の150万台から250万台へのジャンプアップを掲げている。
ただし、それが綿密な計画に基づいた発表かと言われれば、まだ書き割りに過ぎない。現在のダイハツの生産能力では250万台は明らかに達成不可能であり、現時点で生産拠点、つまり新工場建設のプランがない以上、あくまでも意気込みとしての発言であると言わざるを得ない。
ただし、それがウソだとまで言えないのは、TNGAもDNGAも、汎用生産を睨んだスキームだ。それはつまり工場と製品が相互にあまり縛られないことを意味する。だからどこの工場でもどのクルマでも作れる。究極的にはそれが目的だ。未来のいつかの時点で、トヨタアライアンスの全社が設計と生産を上下分離し、生産を統合することだってないとは言えない。そうしたあらゆる可能性を秘めた選択肢の中で、まずは一歩目のスキーム作りについて、現在話し合いが行われている最中である。
会見全体を通して、意外性のある発表は何もなかったが、であるが故に、生産台数の件を除外すれば妥当で、無理のないプランだと筆者は感じた。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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