モンゴル人力士隆盛の中、稀勢の里が横綱に昇進。実に19年ぶりとなる待望の日本人横綱の誕生は相撲界に明るい話題を呼んだことは間違いない。しかしそうかといって外国人力士を色眼鏡で見るようになってしまってはせっかく門戸が広がったはずの大相撲が排他的な国技へ逆戻りしてしまう。
大相撲が八百長問題や野球賭博問題などで揺れ動き、人気凋落にあえいでいた数年前の暗黒時代を思い返してほしい。そのとき、横綱・白鵬をはじめ多くのモンゴル人力士たちは日本人力士たちとともに逆風に立ち向かいながらグラつく屋台骨を支えたのだ。そこを忘れてはいけない。
繰り返すが、日本人横綱の誕生は大変喜ばしいことだ。だがそれに付随して排他的ムードに拍車をかけ、外国人力士たちがヒール化する流れだけは絶対に避けなければならない。春場所の14日目、会場で照ノ富士に「モンゴルへ帰れ!」と罵声を浴びせた観客が今、自責の念にかられていることを願う。
大相撲は国技だが、力士たちが国籍にとらわれず土俵上で純粋にお互いの力をぶつけ合うことが何よりの醍醐味だ。日本が世界に誇れる伝統競技――。そこに差別があってはいけない。
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