ジャーナリストの執拗な質問に、なぜ大臣は“切れて”しまったのかスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2017年04月11日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「記者会見」の現実

 当たり前の話だが、役所だろうが企業だろうが、まったくのノープランで記者会見を開くところはない。自分たちとして伝えたいメッセージや想定質問集を作成し、都合の悪いことを聞かれたら、「当たり障りのない答え」でやりすごすという「シナリオ」をつくって会見へ臨む。

 そこで記者やジャーナリストが、質問して回答をメモる、という淡白なやりとりだけを続けたら、会見を開く側の「シナリオ」通りの記事しか世に出回らない。役所や企業の方たちが嘘をつくわけがないのだから、それでノープロブレムじゃないかという人もいるかもしれないが、ジャーナリストを名乗る人たちは、その「シナリオ」を崩して、政府や企業が世の中になにを知られたくないのかということを世に伝えることが自分たちの仕事だと考えている。

 だから、同じことを繰り返し質問したり、わざと挑発的な発言をして登壇者を揺さぶって、「シナリオ」を破壊しようと試みる。もちろん、登壇者としてもそんなことは百も承知なので、「シナリオ」から逸脱しないように耐える。良い悪いは別にして、それが「記者会見」というものの現実なのだ。

 では、今村大臣がなにかしらの「シナリオ」を意識して回答をされていたのかというと、あの会見からはまったく伝わってこなかった。ジャーナリスト氏のペースに乗せられ、ノープランで議論を進め、答えに窮すると「無礼」だと逆ギレをしているかのようにさえ、見えてしまう。

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