予想を裏切ってきたトランプは、北朝鮮を攻撃するのか世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2017年04月13日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

米軍は北朝鮮を攻撃するのか

 そして今、シリアへの攻撃が、北朝鮮を意識したものだったという話にもなっている。核開発を進め、ミサイル実験を繰り返して挑発を続ける北朝鮮に、米軍は攻撃も辞さないというメッセージを暗に送ったというのである。事実、シリア攻撃後も、米原子力空母カールビンソンが朝鮮半島の近海に向かうなど、朝鮮情勢はこれまで以上に緊迫しているようだ。少なくとも北朝鮮もそう捉えているようで、自分たちが次の標的だとする指摘に「それに驚くわれわれではない」と反発(「NHK NEWS WEB」4月9日)している。

 日本でも北朝鮮問題については注目度が非常に高い。シリアへのピンポイント攻撃でこの騒ぎだから、北朝鮮の国家を潰す攻撃が起きたら、シリアどころではないとんでもない騒ぎになるのは間違いない。ただ北朝鮮に攻撃を行うかどうか、いろいろな要素を見るとその可能性は今のところ低いと言えそうだ。

 まず朝鮮半島情勢の有事に対する米軍の根本的な見方はこうだ。著者の取材にある元国防省高官が北朝鮮についてこう語っている。「北朝鮮の問題は本当に深刻だと見ている。まず中国の隣国であるということではなく、北朝鮮が韓国の首都ソウルを砲撃できる十分な射程圏内にあるからだ。北朝鮮はその事実を元にゲームを進めている。北朝鮮は猟奇的な政権だ」

 この高官が言うように、米軍が北朝鮮を躊躇(ちゅうちょ)する理由の大きな一つは、北朝鮮を攻撃するとソウルを犠牲にしなければいけないことだ。同盟国である韓国の首都を火の海にするわけにはいかない。

 レックス・ティラーソン国務長官は「(軍事行為も含む)すべての選択肢」を考慮し、「先制攻撃」の可能性も示唆しているが、歴代政権でも軍事的選択肢は考慮されてきたことから、これまでと大差はないと見ていい。米国から見ても、朝鮮半島が全面戦争に突入することは望んでいない。

 米軍が北朝鮮を攻撃しないもうひとつの理由は言うまでもなく、中国の存在である。よく耳にするのは、中国は北朝鮮が崩壊したことで押し寄せる難民の問題などを懸念し、北朝鮮の崩壊は認められないというものだ。ただ何と言っても中国が恐れているのは、北朝鮮の崩壊や朝鮮半島の統一で、そこに米軍が駐留して中国との国境沿いで存在感が高まることだ。

 そうさせないよう、中国は米国に対してもギリギリのところまで忍耐させ、牽制するだろう。

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