トヨタが介護ロボット進出で描く未来池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)

» 2017年04月17日 06時40分 公開
[池田直渡ITmedia]
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開発の背景

独居が進む中、外出のサポートとして必要になる愛犬見守りもHSRの開発視野に入っている 独居が進む中、外出のサポートとして必要になる愛犬見守りもHSRの開発視野に入っている

 パートナーロボット開発の背景としては、自動車メーカーとして培った工業用ロボット技術やセンサー技術、モーター動力の精密制御技術などが挙げられているほか、現在、自動運転関連で開発中のIoT(モノのインターネット)技術や人工知能を併用しつつ、ビッグデータによって、ロボットの使われ方を分析改善し、よりきめ細かいサポートを可能にしていく。

 実用現場からフィードバックされるビッグデータのメリットは、メーカーが想定して行う実験の範囲を超えた想像の及ばない使い方や、絶対的なケースの多さで、問題点の洗い出しと開発速度の向上が共に可能になる点だ。

セグウェイタイプの立ち乗りパーソナルモビリティは、高齢者の外出をサポートする。建物の内と外をシームレスに走行する セグウェイタイプの立ち乗りパーソナルモビリティは、高齢者の外出をサポートする。建物の内と外をシームレスに走行する

 社会性に鑑みて、至極まともな目的と説明だが、トヨタは今、大きな流れとして、家庭生活部門への進出に意欲を持っているように思われる。昨年11月、トヨタ自動車傘下のトヨタホームはミサワホームに対して株式公開買い付けを行い、既に子会社化している。家とパートナーロボットは当然のごとく親和性が高い。パートナーロボットが活躍するためにはそのインフラとなる住居設備もまたロボットの活用に適していることが望ましい。そしてここでもIoTやビッグデータは重要なキーになってくるはずである。

 長期的に見れば、今後国内の自動車販売が再び増加に転じることは考え難い。縮小するマーケットの中で、販売網も含めたトヨタグループのリソースを十分に活用し、雇用を維持していくことも考えなければならない。特にディーラー網は介護のラストワンマイルを担う可能性を持っている。グーグルなどが持たないリアル店舗とサービス拠点のアドバンテージが大いに生かせる。

 トヨタは自動車のメインテナンスにおいて、自動車の自己分析(ダイアグノーシス)をIoTと組み合わせ、異常データをディーラーがリアルタイムチェックして不具合を特定し、必要であればユーザーに報せつつ、クルマの位置情報近隣のサービス拠点と連携してオンデマンドで修理を行う構想を持っている。ここから先は筆者の想像だが、もしこのインフラにパートナーロボットを乗せれば、理屈の上では、移動、医療、通販、給食、教育やエンターテインメントを含むコンテンツ提供などの家庭消費を筆頭に、保険や資産運用に至るまでカバーできる可能性を持っている。つまり、ロボットには人の営み全てをまかなうインタフェースとして機能するポテンシャルがあるのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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