鉄道路線廃止問題、前向きなバス選択もアリ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2017年04月21日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

前向きにバスを選択する、という考え方

 「鉄道よりもバスがいい」とか「バスより鉄道がいい」という話ではない。環境に見合った、最適な交通機関を選択すべきだ、という話だ。その議論の中で、バスを鉄道より格下とするような意見はおかしいと思う。バスは便利だ。バス路線は簡単に廃止されない。地域の衰退はバスのせいではない。

JR東日本が気仙沼線と大船渡線で運行するBRTのバス。鉄道時代より運行頻度が上がり、病院などに立ち寄るルートも作られた JR東日本が気仙沼線と大船渡線で運行するBRTのバス。鉄道時代より運行頻度が上がり、病院などに立ち寄るルートも作られた

 これを理解した上で「鉄道か廃止されるから仕方なくバス」ではなく、もっと前向きに「私たちの地域は鉄道よりもバスを選ぶ」という考えがあっていい。事例としては夕張市長が夕張支線の廃止に同意し、JR北海道と協業してバスネットワークの整備に乗り出したくらいだろうか。

 私が乗ったバス路線を挙げると、三陸地域のBRT(バス高速輸送システム)も、地域にとって便利な交通システムだと思う。ただし、こちらは地域にとって前向きな選択ではなかった。それに、地域内の需要は満たすけれど、地域外との連携に課題がある。既存の鉄道との接続改善だけではなく、仙台・盛岡などの直行便や東京発着便を設定すれば、旅行者を獲得できる。もったいないと思う。

 前向きにバスを選択するために何をすべきか。私はバスに限らず、あらゆる道具は「便利」と「おもしろさ」の2つの要素がなければダメだと思う。バスが便利だ。バスがおもしろい。それが「バスのほうがいい」につながる。それから地域が発展して「バスで十分だけどなあ、お客さんが増え過ぎちゃったなあ。仕方ない、鉄道も検討するか」こういう流れが望ましい。

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