高齢者事故を防止する人間工学池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2017年04月24日 06時45分 公開
[池田直渡ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4       

ようやく始まった解決の動き

 マツダの場合、SKYACTIV世代のエンジン/ミッションをすべて新規起こしで開発する際に、このホイール位置の改善を全ユニットに織り込んだ。そうやってホイール位置を前に出して、ようやくペダルオフセット問題を解決したのである。同じことはトヨタのTNGA(Toyota New Global Architecture)世代のクルマでも行われている。日本の自動車メーカーもようやく一部のメーカーが右ハンドル市場のハンデを解決する気になってきたのだ。

マツダの現行デミオのレイアウト。タイヤを前方に押し出すことでペダルオフセットを解決した マツダの現行デミオのレイアウト。タイヤを前方に押し出すことでペダルオフセットを解決した

 当然のこと、ペダルオフセットに対する問題意識が高くなければ、こういう設計は行わない。多くの自動車メーカーは口を開けば「カスタマーファースト」だとか「人間中心」だとか言うが、その割には何十年も前からずっと言われてきたペダルオフセット問題がまだまだ解決されていない。事は安全にかかわる問題だけに、口だけではなく本気で取り組んでほしい。

 筆者は豊かな日本のために、日本の基幹産業である自動車メーカーを応援したい気持ちが強くある。だがしかし、それよりさらに優先すべきはユーザーにとって本当に安全で使い易い道具であることだ。そこをおざなりにしたままでコストだブランドだと言っても、本当に強い企業にはなれない。

 理想を言えば、どのメーカーのどのクルマを買っても変なものではなく、誰もが楽しく安全にクルマのある生活を楽しめることだ。そのためにはユーザーもぜひ、ペダルのオフセットについて考えてみてほしい。ショールームに行ったら、シートをしっかり調節して、ブレーキペダルを踏みながら上体を捻って、それでもしっかりブレーキペダルが踏めるかどうかぜひとも試してほしい。そこには予想外に大きな差があることが分かるはずである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

 →メールマガジン「モータージャーナル」


前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.