ただ一方で、ユーザーから不満の声も挙がっていた。最も大きかったのは火力の問題である。当時のカセットコンロの発熱量は1600kcal/h。これは現在の3分の2ほど。福士氏によると、2000kcal/h以下だと水を沸騰させるのも大変だという。なぜ火力を高められなかったかと言うと、当時のガスコンロの設計上、使うとガスボンベのガスがすぐに冷却されてしまったからだ。岩谷産業はガスボンベをどうすれば冷えないようにできるか知恵を絞った。そこで改良を加えたのが、ボンベとコンロの間をパイプでつなぐことである。ヒートパイプの開発である。
最新カセットコンロ「カセットフー 達人スリムII」は従来商品よりもさらに薄型化した
ヒートパイプとは、熱伝導に優れた素材を使ってコンロの燃焼熱がカセットボンベを温め、ガスの気化を促進するもので、ガスの残量が少なくても強い火力を維持し、ガスを最後まで使い切ることができるようになった。
このヒートパイプによって一気に冷却せず、ボンベの熱を維持することができ、効率的にガスを使うことができるようになった。結果、ガスボンベの発熱量も2000kcal程度にまで高めることができた。しかしまだ課題も残っていて、ヒートパイプで使用する素材は高価だったため、量産化は難しかった。そこで生まれたのが現在も使われているヒートパネルである。これは熱伝導しやすい別の安価な素材を使ったもので、この開発によって92〜3年ごろから岩谷産業はカセットコンロの量産体制に入り、販売台数を一気に伸ばしていったのである。
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