「無人コンビニ」の普及がもたらす経済的インパクト“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2017年05月18日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

従来のコンビニとはまるで異なるビジネスモデル

 小売店の店舗において、「レジ自体がなくなること」と「レジが無人化されること」は天と地ほど違う。日本のコンビニ各社は25年までにレジを無人化する計画を打ち出しているが、これはあくまで既存ビジネスの延長線上にある話だ。レジを打つという作業の一部を機械化し、店員の作業効率をアップすることが目的であり、商品を並べて顧客の入店を待つという従来の小売店の概念が大きく変わるわけではない。

 一方、無人コンビニはそもそもレジがなく、アマゾンの場合には同社のアカウントを持った顧客が入店してくる。つまり誰が入店し、何を購入したのか店側は全て把握していることになるが、これは不特定多数の顧客に商品を販売する従来型の小売店とは根本的に異なる概念である。

 購買履歴などからお勧め商品を推定し、顧客あたりの売り上げを最大化させるネット通販と同じモデルであり、顧客の購買行動の分析を大前提とした一種のITビジネスということになる。

 もしアマゾン型の無人コンビニが普及した場合、小売店は商品をそろえて顧客を待つのではなく、能動的に顧客に働きかける業態に変化せざるを得ない。しかも、完全無人ということになると、理屈上は人件費は限りなくゼロに近づくことになる。これはコンビニというビジネスモデルを根本から変えるほどのインパクトをもたらす可能性がある。

 コンビニは24時間営業を原則としており、人件費の比率はかなり高い。平均的な広さの店舗の売上高はセブン-イレブンの場合、年間約2億3000万円である(店舗の売上高は各社によってバラツキがあり、ローソンの場合は約1億6000万円になる)。このクラスの店舗の場合、アルバイトの人件費は1600万〜2000万円程度になることが多く、これにFCオーナーの人件費を加えると、売上高に対する人件費の比率は約1割強と計算される。

photo 店を出るとアマゾンのアカウントで課金される

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