東海道貨物支線の旅客列車運行計画はどうなった?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2017年05月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

新線建設区間の狙い

photo パンフレットに示された検討ルート。赤い点線が新線区間。赤いスポットが開発活発な地域、黄色のスポットが京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区の指定地域(出典:東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会公式サイト

 新線区間を北から見ていくと、品川〜東京貨物ターミナルが新線だ。JR東日本の空港アクセス線は、田町〜東京貨物ターミナルの休止線を使う。ここは貨客併用化計画では触らない。並行する形で新線を建設し、品川駅に至る。

 当初は新幹線駅に接続させる意向で品川駅を選んだ。現在はリニア中央新幹線の起点に決定している。品川、田町周辺の再開発計画も魅力的で、結果的に品川接続案の魅力は増している。198号答申では、東京都の意向で盛り込まれた「都心部・品川地下鉄構想の新設」もある。六本木と品川を結ぶ路線と東海道貨物支線が直通できれば、双方の計画にとってメリットは大きい。

 東京貨物ターミナル駅付近のやや南から東海道貨物支線の共用となり、浜川崎駅の北側から横浜山内ふ頭付近までが長大な新線区間だ。横浜山内ふ頭で東海道貨物支線に合流し、桜木町駅に至る。この新線区間には、東海道貨物支線の混雑区間の迂回(うかい)と、臨海地域の鉄道空白地帯を解消する狙いがあるようだ。

 東海道貨物支線は川崎方面に曲がり、鶴見を経由する。ここから南側は貨物列車の運行本数が多い。品鶴線(新横須賀線)や横浜線経由の貨物列車が合流するからだ。また、東海道本線・京浜東北線・京浜急行電鉄も並ぶことから、この区間の旅客列車運行は過剰投資になりかねない。

 新線ルートは、混雑区間の迂回と、臨海地域の鉄道空白地帯を解消する目的がある。ただし、新線の一部は鶴見線と重複している。鶴見線は工業地域の通勤手段として朝夕の運行本数が多く、南武線直通の貨物列車もあるため、鶴見線も触らずに新線を作る。

 このルートは「あくまでも協議会における検討ルート」とのこと。既存線利用より新線建設のほうが費用がかさむ。実現に向けた課題のうち費用の面で問題が大きい。しかし、説明を聞けば納得だ。今のところ最善のルートのように思えてきた。

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