東海道貨物支線の旅客列車運行計画はどうなった?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/6 ページ)

» 2017年05月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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実現への課題はほかにも……

 それにしても解決すべき課題は多い。19年の間に、検討ルート周辺の環境は変わった。特区の誕生は追い風だけど、向かい風も多い。最大の向かい風は鉄道貨物需要の増加だ。19年前の1998年7月ごろ、鉄道貨物は衰退の一途だった。「貨物列車が減っていくなら、旅客列車を走らせよう」という意図もあっただろう。

 ところが同年12月に京都議定書が採択されると風向きが変わる。環境に優しい鉄道貨物か見直され、さらに長距離トラックドライバー不足によって貨物列車の需要が高まっている。いまや、貨物列車に乗せたくても空いた列車がないという状況になりつつある。JR貨物は東京貨物ターミナルに大規模物流施設を建設予定だ。東海道貨物支線は本来の用途を発揮すべき時が来た。

 沿線自治体の温度差もある。神奈川県としては羽田空港アクセス・都心アクセスを改善したい。これは県としての重要課題の1つだ。京急電鉄の京急蒲田駅の改良事業についても、神奈川県は恩恵を受ける立場として補助を行っていた。

 一方、東京都側としては、羽田空港アクセスについては都内で解決できる案件がある。川崎・横浜臨海部への旅客需要への期待は薄いだろう。ただし、前述のように「都心部・品川地下鉄構想」と連携すれば、六本木と横浜を結ぶルートになる。ここに活路はありそうだ。

 答申198号の目標年度、2030年までに新たな諮問が行われるだろう。そのとき、東海道貨物支線貨客併用化は実現できているだろうか。実現できなかったとして、新たな答申のリストに盛り込まれるだろうか。

photo 東海道貨物支線の川崎貨物駅 貨客併用化検討ルートではこの北側に塩浜駅(仮称)をつくる。京急電鉄大師線小島新田駅が隣接する
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