ミラ イースで始まる新時代のダイハツ池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/3 ページ)

» 2017年05月22日 07時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

ダイハツの屋台骨となる新型シャシー

 さてダイハツの軽乗用車ラインアップがどうなっているかと言えば、スズキやホンダと同様車高別に3つの基礎ボディを用意する。

  • ミラ イース 車高1500mm 650kg
  • ムーヴ 車高1630mm 820kg
  • タント 車高1750mm 930kg

 この基本にそれぞれバリエーションが加わる。ミラ イースのバリエーションにはミラとミラココア。ムーブのバリエーションにはムーヴ キャンバスとキャスト。タントのバリエーションにはウェイクという具合であり、またムーヴとタントには男性客を意識した外装デザインを与えたカスタムシリーズが用意される。

 このラインアップの中でミラ イースは、いわゆる昔ながらの軽自動車サイズのベーシックモデルながら、エコ性能に特化したモデルとなる。ミラシリーズをベースに車高を上げて室内のボリュームを拡大したモデルがムーヴ。自転車がそのまま積めることを売りに、さらにかさ上げしたモデルがタントということになる。

 利害得失を見れば、車高の低いミラシリーズは軽量で重心が低い分、走行性能が高く燃費でも有利。立体駐車場でも困らない。これがムーヴになると広さと引き替えに重くなり、どこの立体駐車場でもOKというわけにはいかなくなる。タントになると重さは相当なものになり、トレッド幅が限られた軽自動車規格の中で、車高と重心が共に高いクルマのロールを抑えて走らせるためには、ばねを固める必要から乗り心地にも影響が出る。

 蛇足だが、これ以外の例外として軽商用のボディを使ったアトレーと2座スポーツのコペンでダイハツの軽乗用車ラインアップはできている。

 メイン車種は高さが3種と言っても、基本となるシャシーは共用で、今回ミラ イースにブランニューシャシーが与えられたということは、今後数年でここに挙げたすべての車種がこの新型シャシーに変わっていくはずである。

 開発カレンダーが常識的なものだとすれば、新型ミラ イースの企画が立ち上がったのが5年前、具体的な設計が始まったのは3年前程度であろう。当然完全子会社化を発表した2016年1月には、ミラ イースの開発は相当に進行していたはずだし、新ブランディングが発表された今年3月には、認可取得などの手続き上、もうクルマは完成していたはずである。

 問題は前述の通り、企画段階から軸を通したDNGAを熟成するには時間が足りず、旧来のダイハツの新製品として開発が進んできたシャシーと思われる点だ。今後を見据えれば、新ブランディングに先行して開発されてきたこのシャシーがダイハツのほとんどの軽自動車の基本となるだけに、それがどれだけ新ブランディングとマッチしているかがキーになる。

 ダイハツとしてはいろいろ難しいポイントがあるはずで、エンジニアリングの面では全軽自動車の基礎となるミラ イースだが、販売台数で見れば圧倒的にムーヴが多い。2017年4月の実績でみると4000台程度のミラ(ミラシリーズ合算)に対してムーヴ(ムーヴシリーズ合算)は約1万2000台とトリプルスコア状態である。

 ダイハツにとっての正念場は、ムーブのモデルチェンジのタイミングがやってくる2年後であり、前述の「東京オリンピックまでには」という言葉と合致する。しかし、ミラ イースを「なんだ本気の新型じゃないんだ」と見るのは早計で、リブランディングの反映はともかく、設計的には間に合わせでお茶を濁(にご)したようなものではない。それは端的に言えば車両重量に表れており、先代モデルとの比較で80キロの軽量化を成し遂げている。

さまざまな取り組みにより実現した80キロの軽量化。割合で考えると驚異的である さまざまな取り組みにより実現した80キロの軽量化。割合で考えると驚異的である

 軽自動車の衝突安全テストが義務付けられて以降、軽自動車はその室内空間拡大と併せてどんどん重くなってきた。その流れを巻き戻して軽量化しないとこの先の進歩は見込めない。もっと言えば、ライバルであるスズキは既に2014年末にリリースしたアルトの最軽量モデルで610キロという数値を達成しており、ダイハツとしても待ったなしで軽量化を進めなくてはならなかった。

内装の樹脂も無駄な厚みを徹底的に減らして軽量化が行われた 内装の樹脂も無駄な厚みを徹底的に減らして軽量化が行われた

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