昭文社出版制作事業部出版制作グループ地図・開発編集担当の宇田川友道さん
新規路線や延伸区間の描き入れに比べると、廃止路線の削除は簡単だ。しかし、代々の担当者が距離感や長さを熟慮して描いた線を消すことになる。その意味で、地図編集者ならではの喪失感があるという。鉄道の廃線は、地元の人々にとって喪失感が大きい。鉄道や駅がなくなると、町や村が地図から消えてしまう。その気持ちは、地図を作る側にも通じている。16年は留萌本線の留萌〜増毛が消えた。18年は中国地方の三江線が消える。長大路線が描かれた場所がぽっかりと空く。
描いた部分を取り払って、うれしい場合もある。それは、不通区間の注釈だ。東日本大震災後の経年版では、三陸方面の多くの路線が不通となった。不通区間には運休、バス代行など注釈を入れて対応した。その不通区間が少しずつ復旧して、注釈を取り払う。これはうれしかったそうだ。気仙沼線、大船渡線の一部区間はBRT(バス高速輸送システム)による代替運転となっているが、『全国鉄道旅行』では、鉄道と同じ太さの線になっている。
「自治体が復旧を断念したという報道があって、代替バス運転となり、仮復旧と言いつつ線路を取ってしまう。これで本当に復旧するのか。地元の住民感情からすると鉄道は通しておきたい。自治体も住民感情に配慮して、公式に廃止という発表をしない。そこは悩むところです」(宇田川さん)。
存続が未確定のまま、線路の太い線をバスの細い線に変えてしまうと、地元も鉄道ファンも大騒ぎになってしまうだろう。ただし、旅行ガイドという建前上、実態に合わせるべきという考え方もある。迷うけれど、基本は公式発表である。
- 編集者に聞く「元祖・田中角栄本」の秘話
近年、田中角栄元首相を題材にした書籍が大ブームとなっている。ブームのきっかけとなったのは、宝島社が発行する『田中角栄という生き方』だ。出版業界が田中角栄に再注目する要因となった同書は、どのような経緯で世に出たのだろうか。編集を手掛けた欠端大林氏に話を聞いた。
- 事実上の廃線復活 可部線延伸から学ぶこと
新幹線開業などの大きな目玉がないせいか、今週末のJRグループダイヤ改正は大きく報じられない。しかし、鉄道ファンや交通問題に関心のある人には注目の案件がある。広島県の可部線が延伸する。たった1.6キロメートルとはいえ、事実上の廃線復活だ。JR発足30周年の年に、JRとしては初の事例ができた。
- JRダイヤ改正で市販時刻表もダイワリ改正
JRグループは3月4日、例年より少し早くダイヤ改正を実施した。新幹線開業など大きなトピックはなかったけれど、スピードアップや駅の廃止、路線延長など各地で動きがあった。その変化を正確に示す書物がある。市販の時刻表だ。
- 鉄道路線廃止問題、前向きなバス選択もアリ
赤字ローカル線の廃止論議で聞く言葉に「バスでは地域が衰退する」「バスは不便」「鉄道の幹線に直通できない」などがある。鉄道好きとしては大いに頷きたいところだ。しかし、ふと思った。バスの運行に携わっている人々は、これらの声に心を痛めていないだろうか。
- 廃線観光で地域おこし 「日本ロストライン協議会」の使命
全国で廃線利活用事業を営む団体の連携組織「日本ロストライン協議会」が設立総会を開いた。4月9日の時点で15団体が参加している。廃止された鉄道施設を観光や町おこしに使おうという取り組みは、鉄道趣味を超えた新しい観光資源を作り出す。
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