しかし、堀川氏が企画会議でバーストを提案した当初、社内では受け入れられなかった。破壊して飛び散ったコマの部品がユーザーにぶつかり、ケガをさせてしまう危険性があったからである。
「私の企画は、検討の余地もなく却下されました。『そんな危ない玩具を作ることはできない』と。しかし、今までにない突き抜けたアイデアでなければ、これまでのベイブレードを超えることはできません。私は諦めず、周囲に納得してもらえるように課題(危険性)をクリアしようと考えました」
堀川氏はバーストの安全性を高めるため、取り外せるコマの部品数を3つまでにし、ある程度の重さを持たせた。破壊した際の部品の飛距離を抑えるためだ。また、コマ同士がぶつかり合うスタジアム(リング)も改良。部品がリングから飛び出ないよう、リング上部に安全カバーを設置した。問題視されていた危険性をクリアし、バーストの開発を実現させた。
バーストは発売後、シリーズ第1弾・2弾と同様の初速で販売数を伸ばした。堀川氏は「破壊の要素が加わったことで、ゲーム性が格段に高まった」とヒットの要因について語る。
「これまでのベイブレードでは、回転数に依存した戦いになるため、腕力の強い子どもが有利でした。しかし、破壊がルールに加わったことで例え回転が弱くても、コマのぶつかる角度次第で相手を倒せますし、回転が止まりそうになっても逆転することができます。つまり、運の要素が強くなり、最後の最後まで勝負を楽しめるようになったわけです」
ある程度回転が弱まってくると勝敗が見えてしまうため、勝負の途中に諦めてしまうケースも多かったが、バーストでは“逆転ドラマ”が生まれるようになった。実際、同社や小売店が毎月開催するバーストの大会(ユーザー同士の対戦イベント)では「驚きの歓声」が飛び交うようになったという。
このほかにもバーストでは、4つのコマのタイプを用意し、ゲーム性をより高めた。用意したのは、動きが大きい「アタックタイプ」、破壊されにくい「ディフェンスタイプ」、長く回ることに特化した「スタミナタイプ」、攻めと守りのバランスを重視した「バランスタイプ」である。
ディフェンスタイプはアタックタイプには強いが、スタミナタイプには弱い――とった具合に、それぞれのタイプには相性があるため、どのタイプのコマで勝負するかという駆け引きも楽しめる。また、仮に相性の悪いコマを出してしまったとしても、前述したように破壊による逆転の要素があるため、勝てる可能性も残るので諦めずに勝負を楽しめる。
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