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» 2017年06月07日 11時00分 UPDATE

“フレッシュ”にこだわり:「もぎたて」大ヒットまでの道のりとは? (1/2)

ITmedia ビジネスオンライン編集部が主催する読者イベント「アクションリーダー学」。第2回目は、アサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」の開発プロジェクトリーダー、宮广(みやま)朋美さんが登壇。ヒット商品誕生までの取り組みを語った。

[ITmedia]

 2016年4月に発売し、大ヒットとなったアサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」。缶酎ハイや缶ハイボールなど、割らずにそのまま飲めるアルコール飲料が属するRTD(Ready To Drink)市場で、存在感を示すデビューを飾った。RTDジャンルでヒット商品に恵まれなかったアサヒビールの開発現場で何があったのか。ITmedia ビジネスオンライン主催のセミナーで、同社マーケティング本部の宮广(みやま)朋美さんがその背景を語った。

photo アサヒビールの缶酎ハイ「もぎたて」

5000人規模の調査を実施

photo アサヒビールマーケティング本部の宮广(みやま)朋美さん

 RTD市場は成長している。16年まで8年連続で市場規模は拡大しており、なかでもアルコール度数7%以上の高アルコールの伸びは顕著だ。そんな中、アサヒビールはヒット商品に恵まれなかった。13年にはRTD事業の売り上げが過去最低を更新。社内でも撤退が議論されるまでに。不振の最大の要因は“核”となるブランドが育成できていないことだった。「競合の後追いになってしまっていた。新商品を出しても出してもヒットせず、という状態が続いていた」と宮广さんは振り返る。

 「お客さま理解が足りない」。商品開発の原点に立ち返り、徹底した顧客分析からスタートした。約3年かけて、RTD事業では過去最大規模となる約5000人の調査を実施。これは、看板商品「スーパードライ」の発売時に実施した調査と同規模になる。アルコール飲用実態や缶酎ハイに求めることなどを洗い出した。

 そこで分かったのは、缶酎ハイに対する潜在的な不満点。人工的な甘さや香りが口の中に残ることだった。理想の酎ハイは「居酒屋の生搾りサワー」。「変な甘さも残らず、すっきりしている。自然な果実感がある」ことが好まれる理由だった。ここから、「つくりたて」「フレッシュ(新鮮)」を新価値に掲げた開発が始まる。

収穫後24時間以内に搾った果汁のみを使う

 どうすれば缶酎ハイで“新鮮さ”を感じることができるのか。宮广さんらは、原材料である果汁を新鮮な状態で加工すれば、それが実現できると考えた。そこから出てきたのが、「収穫後、24時間以内に搾った果汁だけを使う」というコンセプトだ。一般的に、レモンは収穫後48〜72時間で搾汁される。それを短縮するのは至難の業だ。農園から加工場所まで遠いと、運ぶ時間が長くかかってしまう。「24時間以内に搾りきる、という条件を満たす果汁メーカーを探すのに、今でも苦労している」という。

 それでも24時間以内にこだわるのは、時間の経過によって果汁の品質が大きく変わるからだ。果物の香りをデータ化する手法を学んで分析すると、驚きの結果に。レモンの場合、収穫から3日でレモンの香りが10分の1に減少。一方で、新鮮さを損なわせる薬品臭は1.4倍に増えた。「分析してみてびっくりした」。

 次に考えたのが製法だ。新鮮な果汁を使っても、飲まれるときに味が落ちていたら意味がない。RTD商品の場合、製造から1〜2カ月経過した商品が店頭に並ぶケースが多い。時間がたってもつくりたてのおいしさを維持できる「アサヒフレッシュキープ製法」を独自開発した。

 この製法の肝となるのは2つの技術。1つは、香味劣化抑制技術だ。液体の劣化を抑制する効果のある天然由来の成分をフレーバーに合わせて選定し、添加する。もう1つは低温殺菌技術。通常、酎ハイは高温で殺菌するため、そのときに品質が落ちてしまう。それを防ぐため、品質を担保した上で通常より低温で殺菌する技術を開発した。

 この製法で作った酎ハイを分析すると、時間が経過してもレモンの香りの成分は一般市販品の10倍残った。また、劣化成分は半分に抑制できた。果実本来のフレッシュな味わいが維持できることを証明した。「レモンだけでも500以上のサンプルを作った」という試行錯誤が実を結んだ。

photo 「アサヒフレッシュキープ製法」の効果を実証した
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