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» 2017年06月10日 07時23分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:深層学習と顧客理解、衛星データのマネタイズの鍵とは? (1/2)

ベンチャーが大規模な資金調達を発表するなど、今、米国では衛星ビッグデータ解析が白熱している。キーワードはディープラーニングと顧客理解だ。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 今年4月、米国・シリコンバレーにおいて衛星データ解析に特化したカンファレンスが開催され、関連ベンチャー企業が集結した。

 その場のステージに登壇した衛星データ解析ベンチャーの米Orbital Insightが5月に5000万ドルの大規模資金調達を発表するなど、米国では今、衛星ビッグデータ解析が白熱している。キーワードはディープラーニング(深層学習)と顧客理解だ。詳しく見ていこう。

米Orbital Insightなどが手掛ける衛星ビッグデータ解析が盛り上がりを見せている(出典:Orbital InsightのWebサイト) 米Orbital Insightなどが手掛ける衛星ビッグデータ解析が盛り上がりを見せている(出典:Orbital InsightのWebサイト

注目は農業、エネルギー、金融

 4月25日にシリコンバレーで開催された「Earth Pixels」は、衛星データの解析と利活用に特化したカンファレンスで、ここ数年注目を集めている。筆者も今回初めて参加した。その特徴はユーザー視点での議論だ。

 登壇者は、各業界の顧客企業と顧客向けにアプリケーションやサービスを提供する企業であり、この手のカンファレンスで多い衛星の作り手側の企業は登壇しない。セッションは顧客業界ごとに分かれて実践的な議論が行われる。

 今年は農業、エネルギー、金融がテーマだ。さまざまな可能性が指摘されている衛星データの解析と利活用であるが、現在米国で注目を集めているのが、この3つの産業であることが分かる。

ディープラーニングで衛星データを解析

 エネルギーセッションでは、顧客企業としてShell(英・蘭)のグループ企業で原油探索と生産を担当するShell Exploration & Production Companyが登壇。サービス提供側のアプリケーション企業として、衛星データ解析ベンチャーの米Orbital Insight、気象データ解析企業の米Weather Companyなどが登壇した。

 登壇者間で交わされたデータ解析のキーワードはディープラーニングだ。Orbital Insightのジェイソン・ローン副社長は「衛星画像解析にディープラーニングを適用することで、これまで業界統計に載っていなかった5000の石油備蓄タンクを発見した(計2万タンク)。石油備蓄指標は各国政府や金融機関にニーズがある」と語った。

 同社はIT大手米GoogleやNASA(米航空宇宙局)などを渡り歩いてきたAI(人工知能)のスペシャリストであるジェームス・クロフォード氏が率いており、これまで合計8000万ドル近くを資金調達。衛星自体は保有せずに、欧Aribus、米Planet、米Digital Globeなどの衛星企業から画像を購入、機械学習を活用して衛星画像の中からさまざまな物体を認識、カウントするサービスを実施している。最近はアジア地域の開拓も積極的に展開中だ。

顧客の業務プロセスやペインポイントを理解

 また、同セッションでは顧客に対するサービス提供の視点として、「サービスを売るには、顧客の業務プロセスとペインポイント(悩みの種)を深く理解するために時間を使う必要がある」「アプリケーション開発企業は顧客業務を理解して、言語が分かる人を雇うことが重要だ」と語られるなど、徹底したユーザー視点が求められるという。実際、Orbital Insightの担当者に聞いたところ、新規のアルゴリズムを組む場合には、顧客企業との間に数カ月の開発、実証プロジェクトを行うとのことだ。

 また、「衛星データはSilver bulletではない(※狼男を1発で倒すと銀の弾いう比喩から転じて、万能な解決策のことを指す)、パズルのワンピースだ」「価値はデータではなく、インサイト(示唆)である」といったコメントも繰り返され、データ統合により顧客企業の事業判断や経営判断を高度化することが求められている。

サービスオファリング形態には課題が山積み

 Shellは既にSPOT、TerraSAR-X、Sentinel、DigitalGlobeなどさまざまな衛星データを活用してきているが、サービス提供側に対して「新たなソリューションを導入する際に既存業務プロセスにうまく統合できること、契約形態・SLA(サービス品質保証)・ワークフローなどをシンプルにすること、また解析や検知などは自動プロセスで行われて、意思決定段階のみを人間が行うようになるべき」と努力を呼び掛けた。

 さらには、Shellと協業するにあたっては「衛星データの利用ライセンスは多国籍企業にとっての使いやすさ、アジア市場に対応した低価格などに対する対応が必要」であり、また「ベンチャー企業は信用を失うようなOver selling(誇大広告)をしてはいけない。例えば、衛星データだけで石油が見つかるわけではない」と冷静なコメントも語った。

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