日本ではまだ加計学園の問題が盛り上がっているが、世界が大注目した今回のコミー証言から日本が学べることがありそうだ。公聴会の発言を見ても、コミー前長官が文科省の事務次官だったら、少なくとも現在のような不毛な展開にはなっていない可能性がある。
どういうことか見ていく前に、まず米国で何が起きているのか、簡単に説明したい。トランプに関して問題となっているのは、トランプの側近だったマイケル・フリン前大統領補佐官に対するFBIの捜査を、大統領自身が妨害しようとしたかどうかだ。ちなみにフリンは、ロシアとの関係が露呈して2017年2月に辞職に追い込まれている。もしトランプがコミーに、ロシアとの関係でFBIの捜査対象になっていたフリンに対する捜査を止めるよう圧力をかけていたら、それは「司法妨害」に当たり、弾劾裁判から罷免(クビ)にもつながりかねない重罪となる。
そこで、FBIの捜査をめぐって、トランプとコミーが2人きりで何度か交わした会話の内容が焦点となっているのである。
コミーは、ニューヨークのトランプ・タワーやホワイトハウスの大統領執務室で、トランプと2人きりで話した内容について、直後に全てを書面にして記録していた。具体的に言うと、例えばトランプ・タワーでの面談後には、ビルを出て乗り込んだクルマの中で、機密情報を扱える安全なノートPCに今まさに話をしてきた内容をタイプして記録した。
これはコミーがFBI長官になる前から、検事としてニューヨークのマフィアを起訴したり、NSA(米国家安全保障局)のテロリスト監視プログラムを法の範囲内で行うよう変更させるなど、数々の厳しい現場で得た経験によるものだと言える。そこで後々重要になるかもしれない情報をきちんと残す術を身に付けたと考えられる。
今回の公聴会で、コミーはこんなふうに委員から聞かれている。「司法省でもFBIでも経験値が高く、これまで共和・民主両党の大統領と仕事をしたあなたが、なぜ(大統領との2人の会話について)記録を残し始めるようになったのか」
コミーは、その理由について「いくつかの要因が入り混じっています。状況、会話内容、やり取りをしている相手――。まず米国の大統領と2人きりだった、つまり間もなく大統領になる次期大統領です。会話内容については、FBIの核心的な責任に触れた内容だったことと、次期大統領個人に関する話だったからです。さらにやりとりをしている相手について、私は正直言って、彼(トランプ)が話し合いの本質について嘘をつくかもしれないと懸念していたからです」と述べた。
つまり、コミーはトランプを全く信用しておらず、そのために少し想像力を働かせて、信用できない次期大統領と密室で話をすることでどう利用されるのか分からないという心配があったからこそ、詳細にメモを記録したのである。
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