もしコミー前FBI長官が文科省の事務次官だったら世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2017年06月15日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

もしコミーが文科省の事務次官だったなら

 特にこの部分のやり取りを聞いていて加計学園の問題が脳裏に浮かんだ。

 コミーのケースでは、トランプから直々に「意向」らしきものを告げられており、その内容と真偽、圧力の有無が問題になっている。加計学園の問題では、獣医学部を新設するプロセスの中で、「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向」という文書が作成されたとされ、後にメディアに流され、それを元に安倍首相の圧力が存在したかどうかが議論になっている。

 加計学園問題の本質である文科省の文書の存在を「確認できない」と主張していた自民党は、結局文科省で再調査を行うことを決め、近く結果が発表されそうだ。だが仮に今さら文科省の内部から文書が出てきて、そこに同じように「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向」というような文言が確認できたとしても、首相側からすれば、その「意向」の存在そのものが事実とは証明されない、と突っぱねることもできる。事実、前川氏自身が、この「官邸の最高レベルが言っている」という文言について「総理のご意向かどうかは確認のしようはありませんが」と語っていることからも、首相にまで被害が及ぶことはないだろう。

 ないはずの文書が出てきたことで、文部科学省幹部が責任を取って辞職する、といったことはあるかもしれないが、それ以上になることはないのだ。

 ただもしコミーが事務次官だったなら、おそらく「官邸の最高レベル」または「総理」との接触を試みるなど、関係者に直接、いつどこで誰が述べた「意向」なのかを確認したかもしれない。そして、それを直ちに、トランプとの会談後に行ったように、時間や場所など詳細を含めて内容を記録したに違いない。

 特に日本において、獣医学部新設というのは大きな政策転換であり、重要な問題である。その重大性を考えると、コミーなら新設決定に関わるような文書や口頭で細かなやり取りも、間違いなく記録していたに違いない。そしてその記録を根拠に、「怪文書」と一蹴されることなく、自信をもって真実を具体的に告発できた。

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