富士ゼロックスがサンプリング調査を行った際に、富士フイルムHDが同社に対して強固な態度を取り、詳しい調査を行うよう厳命していれば、事態の早期発覚につながっていたかもしれない。しかし、富士フイルムHDがそうした態度を取ることをためらった理由が、富士ゼロックスに対する「過度なリスペクト」だという。
富士ゼロックスは、富士フイルムHDと同等の1兆円程度の売上高を計上。デジタルカメラの普及に伴い銀塩フィルム事業が衰退していく中で、富士フイルムHDは、グループ内の稼ぎ頭として躍進を遂げる富士ゼロックスを異例とも呼べる特別扱いで配慮。子会社の管理規定すら適用していなかった。
「当社グループ内では、子会社に対して細かな管理規定を持っており、子会社で人事異動、戦略変更、設備投資を行う際は必ず事前に届け出る決まりになっている。しかし、富士ゼロックスの場合は自主性を重んじ、報告の義務を課していなかった。フィルムの不振によって収益がなくなり、経営危機に陥った際も利益を出してくれていたので、うるさいことは言えなかった」(助野社長)
富士フイルムHDは今後、ガバナンス強化を図るため、富士ゼロックスに子会社管理規定を適用するほか、経営層の刷新に踏み切る。富士ゼロックスの山本忠人会長のほか、度々「FXNZの会計処理に問題はない」と繰り返し、事態の隠蔽(いんぺい)を図ったとされる吉田副社長、柳川勝彦専務執行役員など計6人の役員を6月末をめどに退任させる。
また、富士フイルムHDの古森重隆会長が富士ゼロックスの会長を兼務するなど、計7人の役員を派遣する。
助野社長は「“雨降って地固まる”ということわざのように、富士ゼロックスを教育し、良い会社へと変えていきたい」と決意を新たにした。
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