デジタル変革に求められるアナログ力とは?有識者に聞く(2/4 ページ)

» 2017年06月19日 07時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

「HRテック」にも期待大

――今後、デジタル・ビジネスが発展する可能性がある分野や業種はありますか。

本好: 人材管理の分野にテクノロジーを導入した「HRテック」が流行する兆しを見せています。現在、採用活動を行う企業向けに、応募者が提出した履歴書の志望動機やスキルの項目を自然言語処理して、募集要項とマッチングさせるツールを提供するベンチャー企業などが増えています。

 社内の人材評価項目ともマッチングして、「入社したら、この人は能力が高くなりそうだ」といったポテンシャル順に応募者を並べた名簿を作成し、採用の参考にするのです。

 一方、社内の優秀な人が出ていかないように、AIを使って離職リスクがある人を特定するツールも出始めています。

 ビジネス用SNS「LinkedIn」のプロフィルを変えたり、異動・昇進したりといった社員のアクティビティーを取得・分析し、今まで離職した人のデータと照合。行動パターンがマッチングした人の上長や人事部門にアラートを出すという仕組みです。

 こうしたサービスを提供する企業に対し、米Microsoft、米Oracle、独SAPなどの大企業が投資する動きも起きています。

photo ガートナージャパンの本好宏次氏=左、鈴木雅喜氏=右

変革のコツは「スモールスタート」

――日本企業と海外企業では、やはり海外企業の方がデジタル・ビジネスが進んでいるのでしょうか。

鈴木: どちらかと言えば海外ですが、似ている部分もあると思います。米General Electric(GE)はデジタル・ビジネスの先駆者として有名ですが、実は全ての部門が先進的なわけではなく、スキルやノウハウが不足している現場も多いです。既存ビジネスに対する危機意識も、“GEデジタル”と呼ばれるデジタル・ビジネス推進部門とそれ以外では全然違います。

 裏を返せば、あれほどデジタル・ビジネスで有名になっている会社でも、組織を丸ごと変革するのは難しく、小さな部門からスモールスタートしているのです。

本好: 専門性のある組織を立ち上げてスモールスタートする動きは、日本企業でも起きています。特にITや世界の動きに詳しい外部の血を入れる動きが盛んになっており、パナソニックは、日本マイクロソフト元社長の樋口泰行氏を関連会社の社長に据えたり、SAP元バイスプレジデントの馬場渉氏を北米子会社の副社長に据えたりと、戦略的な人材配置をしています。

 ヤマト運輸が自動宅配サービス「ロボネコヤマト」を始めましたが、あの取り組みもDeNAと手を組んで、外部のノウハウを取り入れています。始め方もスモールスタートで、神奈川県の戦略特区で実証実験から始めています。

 ただ、こうした企業はほんの一部。当社が実施したアンケートによると、日本で実際にデジタル・ビジネスに取り組んでいる企業はたった2割という結果が出ています。

photo 日本企業の現状=出典:ガ―トナー(2017年2月)

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