ネットを遮断された「英語圏」の地域は、どうなったのか世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2017年06月22日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

英語圏地域のネット接続を遮断

 そもそも、この「ネット遮断」の背景自体が興味深い。カメルーンの公用語である「フランス語」と「英語」にまつわる争いがきっかけとなっていたからだ。

 カメルーンはもともとドイツの植民地だったのが、フランスや英国に分断統治され、1972年にカメルーンという名の国が誕生した。現在、人口は2277万人だが、植民地時代の名残から、国民の大半はフランス語を話し、政府も「フランス語政府」となっている。一方、もともと英国領だった北西と南西地域では現在も英語が使われており、その英語圏の住民数は人口の5分の1を占める。

 英語を使用する国民は少数派で、建国以来、フランス語を使う政府が英語圏の地域を差別してきた。英語圏の人たちは、フランス語が中心の教育や司法システムの中で除外され、国内で「準国民」のような扱いを受けてきたと主張してきた。そして最近、英語圏地域の分離独立を主張する動きが再燃している。

 2016年10月、英語圏の弁護士や教師たちによる大規模なストライキが勃発。きっかけは、フランス語を話す判事が英語地域に赴任することになったことで英語圏国民の怒りが爆発したからだった。抗議デモはどんどん激しさを増し、死者が出るほどまでに発展。治安当局とデモ隊が衝突する動画がネット上にアップされ、さらに住民の怒りを増幅させた。

 そこで独裁的なポール・ビヤ大統領の率いる政府は、さらなるデモなどの情報が共有されないように、また国民を刺激する情報が拡散されないようと、2017年1月、英語圏地域のネット接続を全て遮断するようプロバイダー(ネット接続事業者)などに命令を下したのである。

 そこから93日間にわたり、同地域ではそれまで住民が日常的に利用していたインターネットが一切使えなくなった。人権的な見地から言えば、人がインターネットにアクセスできないのは基本的人権と自由の侵害に当たり、さらに表現の自由を制限するものだと、国連などの世界的組織が指摘している。そんな人権侵害が起きたのである。

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