大手スーパー買収のアマゾン、小売の「帝国」になれるのか来週話題になるハナシ(3/4 ページ)

» 2017年06月22日 08時00分 公開
[藤井薫ITmedia]

アマゾンの思惑

 現在、アマゾンが提供する生鮮食品デリバリーを利用するには、有料会員でなければならない。おそらくそれは今後も変わらないと見られている。つまり、ホールフーズ・マーケットなどと連携して食品分野を充実させれば、アマゾンの有料会員を増やすことができ、会員費からのもうけを増やすのに一役買うことになる。また相乗効果で食品とは関係のない他の商品の売り上げも増えることは間違いないだろう。

 アマゾンには、別の思惑もあるようだ。それは、プライベートブランドの有効活用だ。あまり知られていないが、アマゾンはコーヒーやベビーフードなど、自社の独自ブランド商品を展開している。

 2016年に密かにデビューしたアマゾンのプライベートブランド食品だが、自社ブランドなら価格を自由に設定でき、コストを省くこともでき、利益率が高い。ホールフーズ・マーケットの店頭で自社ブランド商品が扱われるようになれば、これまでに考えられなかった販路を拡大することができる。

 同様にホールフーズ・マーケットの自社商品もアマゾンで販売することができ、どちらにとってもメリットは多い。さらには、ホールフーズ・マーケットの高すぎる価格設定を改善させることも期待できるかもしれない。

 こうした要素以外に、やはり何と言ってもアマゾンにとって、「ホールフーズ・マーケット」のブランド力は魅力だ。ホールフーズといえば、オーガニック食品を取り扱うストアとして業界大手。オーガニック食品は、いま業界でトレンドになっており、売り上げも急激に伸びている。

 近年、スーパーマーケットの大手ブランドが、こぞってオーガニック食品の販売を強化しつつあるのはそのせいだ。ホールフーズ・マーケットのおかげでニッチだったはずのオーガニック食品にスポットライトが当たったのに、いまや逆にホールフーズが他社にシェアを奪われつつある状況になっている。

 それでも、オーガニック系スーパーとしてのホールフーズ・マーケットのブランド力はいまだに健在だ。引き続き成長が期待される470億ドル規模のオーガニック食品市場で、アマゾンが存在感を示すには、ホールフーズ・マーケットのブランドイメージは非常に有利に働くだろう。

アマゾンにとって、「ホールフーズ・マーケット」のブランド力は魅力

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