なぜ、鉄道には特別会計がないか。いや、特別会計のようなものはあった。日本国有鉄道だ。日本の幹線鉄道交通を所管し、民間では維持できないローカル線を維持し続けた国鉄こそ、鉄道特別会計の役割を代替する存在だった。そう考えると、国鉄の破綻は日本にとって、鉄道交通の地位をおとしめる大事件だった。いまさら悔やんでも仕方ないけれど、鉄道の災害復旧が進まない理由も、遠回しには国鉄の因果である。
いまさら鉄道特別会計を作るなどできない。しかし、国土交通省に鉄道整備予算が乏しいという現実はある。鉄道整備のために財務省にお伺いを立てれば、国土交通省には空港・道路含みでたくさん予算を配分したから、そこで融通してくれ、となる。それでは国土交通省内部で調整できるかというと、道路は旧建設省の所管であり旧運輸省の鉄道に融通するつもりはなく、旧運輸省同士の空港も行革で民営化に向かっており、鉄道まで面倒を見ていられない。
踏切の解消1つとっても道路寄り、自動車交通優先で行われる。鉄道はふびんだ。政府は鉄道の位置付けを上げていく必要がある。日本は新幹線の海外進出のために闘っているけれど、この状態ではなんとも心もとない。国鉄の負の遺産は忘れて、もっと鉄道の整備と維持、技術開発に予算を分配すべきではないか。
国の一般会計のうち、公共事業関係費の内訳。約6兆円のうち、鉄道は1000億円に満たない(鉄道建設関係者OBによる路線強化検討WG技術講演会資料)
- もうひとつの福島――「只見線」を忘れてはいけない
事故や災害で鉄道路線が不通になった場合、復旧や廃止の動きが報じられたり、鉄道会社から今後の見通しなどが発表される。しかし鉄道会社からの発表がほとんどなく、報道もあまりされない区間がある。それは……。
- 福島・只見線復旧問題――なぜ降雪地域に鉄道が必要なのか
2011年の豪雨被害で不通になっている只見線について、福島県と地元自治体が「運行再開後の赤字、年間3億円を補てんする意向」と福島民報が報じた。鉄道を維持する利用者が見込めないと分かっていながら、それでも鉄道を残したい。その悲痛な思いはJR東日本と国に届くだろうか。
- なぜ鉄道で「不公平政策」が続いたのか?
赤字の鉄道路線の存続問題を議論するとき「鉄道は他の交通モードに対して不公平な立場にある」という意見がしばしば見受けられる。JR北海道問題もそうだし、かつて国鉄の赤字が問題になったときも「鉄道の不公平」が取りざたされた。なぜ鉄道は不公平か。どうしてそうなったか。
- 鉄道路線廃止問題、前向きなバス選択もアリ
赤字ローカル線の廃止論議で聞く言葉に「バスでは地域が衰退する」「バスは不便」「鉄道の幹線に直通できない」などがある。鉄道好きとしては大いに頷きたいところだ。しかし、ふと思った。バスの運行に携わっている人々は、これらの声に心を痛めていないだろうか。
- 国鉄を知らない人へ贈る「分割民営化」の話
4月1日にJRグループは発足して30周年を迎えた。すなわち、国鉄分割民営化から30年だ。この節目に分割民営化の功罪を問う論調も多い。しかし、どの議論も国鉄の存在を承前として始まっている。今回はあえて若い人向けに国鉄と分割民営化をまとめてみた。
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