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» 2017年06月23日 07時30分 UPDATE

価格転嫁せず?:好景気でも鈍い物価上昇 背景は

景気が好調にもかかわらず、物価の足取りは鈍い。

[ロイター]
photo 6月21日、景気が好調にもかかわらず、物価の足取りが鈍い理由として、賃金上昇圧力が価格上乗せへと波及するルートが細くなっているとの見方が日銀(写真)内で浮上している。2016年2月撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 21日 ロイター] - 景気が好調にもかかわらず、物価の足取りが鈍い理由として、賃金上昇圧力が価格上乗せへと波及するルートが細くなっているとの見方が日銀内で浮上している。深刻な人手不足に対応した企業の営業時間やサービスのカット、省力化投資の推進などが背景にあるとみられる。

日銀が21日公表した4月26・27日の金融政策決定会合の議事要旨によると、労働需給の引き締まりに比べて物価が緩慢な理由について、企業が労働力確保のために賃上げを行う一方、「コストの増加を価格に転嫁するのではなく、営業時間の短縮や提供するサービスの見直しなどによって対応する動きがみられる」との見解を何人かの政策委員が示した。

深刻な人手不足を背景に、外食や小売業を中心に営業時間を短縮する動きが出ているほか、宅配便の配送時間の見直しなど対応策を講じる企業が相次いでいる。

ロイターが資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に6月2日─15日に実施した調査によると、今後3年間の事業見通しにおける課題として「内需縮小」に次いで「人手不足」と回答する企業が多く、人手不足のためにサービスを制限せざるを得なくなるとの回答は、製造業で14%、非製造業で21%を占めた。

本来なら、人手不足に対応するため、労働コストの上昇を許容し、その分を価格に上乗せするパターンが「王道」のはずだが、あえてサービス制限などで対応。販売価格やサービス価格を据え置いてシェアの確保を狙う姿が目立つ。

また、企業は機械化・自動化など省力化投資にも前向きに進め、人手不足の緩和や賃金上昇圧力の吸収に懸命だ。

日銀内で浮上しているのは、こうした企業の取り組みが、好調な景気にもかかわらず、物価上昇が鈍い一因にあるのではないかとの見立てだ。

議事要旨では、企業が人件費上昇を価格に転嫁できない理由として「人々のデフレマインドが根強く残っており、企業が価格引き上げに動きにくい状況にある」との意見が示された。

効率化投資などによる生産性向上によって、短期的に物価抑制の色彩が強まるなら、効率化の限界とともに、企業は賃金上昇分を価格に転嫁せざるを得なくなるとの推定も成り立つ。

マクロ的には、需給ギャップのプラス転換が実現し、プラス幅もさらに拡大傾向を示している。そこに人手不足による賃金上昇圧力が継続すれば、いずれ物価上昇圧力が高まる──というのが、日銀内の多数意見と言える。

黒田東彦総裁は16日の会見で、足元の物価の弱さを認めながらも、さらなる需給ギャップの改善が「賃金・物価の押上げ圧力になっていくことは間違いない」とし、「賃金の上昇は、次第に販売価格やサービス価格の上昇につながっていく」と価格転嫁の実現に期待感をにじませた。

このトレンドによる物価上昇の顕在化圧力に対し、企業のサービスカットや省力化投資の物価抑制の影響がどの程度出てくるのか。その結果によって日銀の情勢判断が変化する可能性もありそうだ。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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