とはいえ、火加減の自動化の実現は、同社だけでは不可能。開発に協力してくれるパートナーが不可欠だった。大手家電メーカーと競合するためパートナー探しは難航するが、とある業務用厨房機器メーカーが協力してくれることになった。愛知ドビーがデザインと仕様の決定、業務用厨房機器メーカーが設計を担当することになった。
「機能を満たす設計は、業務用厨房機器メーカーに丸投げする形でお願いしていました」と振り返る土方氏。しかし、この進め方ではうまくいかなかった。
その理由は、同社と業務用厨房機器メーカーの間に開発に対する温度差があったから。「開発に協力してくれた業務用厨房機器メーカーは一生懸命やってくれましたが、『世界最高の調理器をつくりたい』という当社の想いが、なかなか伝わらず、思い描くものができなくなってしまったんです」(土方氏)。例えば、炒め調理が可能な耐熱温度の実現を要求しても、「無理です」と断られてしまったことなどがあったという。
結局、この協業はうまくいかず、2015年に解消する。このときの反省点として土方氏は、「『つくってもらう』という考えになっていたこと」を挙げる。自分たちで設計しないと納得できるものはできないと悟ったことから、技術者を採用し自社で設計。専門性が求められるプリント基板の設計などは、外部の専門メーカーに直接、協力を依頼した。
このように紆余曲折を経たポットヒーターの開発は、底面をIH、側面をアルミヒーターで加熱し、かまど炊きと同じような立体的な加熱を実現。風の影響を受けない分、熱の入り方がかまど炊きより安定することになった。
また、他の炊飯器には普通にある保温機能を省略した。保温機能を省略したのは、保温したご飯はおいしくないこと、保温用のフタをなくすと手入れが簡単になり衛生的ということのほかに、保温機能をなくしたほうがおいしく炊けるということがあった。
保温機能があるとおいしく炊けないのは、炊くときにスムーズな対流が起こせないため。スムーズな対流を起こすには、鍋の下部と上部に温度差をつくらなければならないが、保温機能を持つ外フタを設けると温度差が生まれず対流が起こせなくなる。そのため、保温を目的とした外フタをなくして鍋の下部と上部で温度差をつくり、スムーズな対流を起こすことにした。
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