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» 2017年06月26日 11時27分 UPDATE

進まぬ業界の合意形成:タカタ再建、不安残る事故再発防止策 製品交換ルールなど課題

異常破裂のおそれがあるエアバッグの大量リコールで巨額の潜在債務を抱えるタカタが民事再生法の適用申請による再建に動き出す。だが最初のリコールから8年余りたった今も、肝心の事故再発防止策をめぐる業界内での合意づくりは進んでいない。

[ロイター]
photo 6月25日、タカタが民事再生法の適用申請による再建に動き出すが、最初のリコールから8年余りたった今も、肝心の事故再発防止策をめぐる業界内での合意づくりは進んでいない。都内で昨年2月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 25日 ロイター] - 異常破裂のおそれがあるエアバッグの大量リコール(回収・無償修理)で巨額の潜在債務を抱えるタカタ<7312.T>が民事再生法の適用申請による再建に動き出す。しかし、最初のリコールから8年余りたった今も、肝心の事故再発防止策をめぐる業界内での合意づくりは進んでいない。

タカタ製エアバッグ部品はなお多くの車に搭載されており、いつ起きるとも知れない事故に消費者の不安はぬぐえないままだ。

<部品交換、届かない連絡>

「対策部品の準備ができ次第、あらためて連絡します」。昨年10月、都内在住の男性に届いたある自動車メーカーからのリコール案内にはこう記されていた。その後、8カ月経つが、男性にメーカーからの連絡はない。

案内には「当社の車に異常展開の報告はなく、直ちに安全性の問題があるとは考えておりません」との文言もあった。だが、衝突事故が起きたら、命を守るはずのエアバッグに逆に殺されるかもしれないという不安が頭から離れない、と男性は漏らす。

タカタ製エアバッグの異常破裂は、火薬材料である硝酸アンモニウムが高温多湿の環境下に長期間さらされ、劣化したことが原因とされる。異常破裂によって、エアバッグを膨らませる部品のインフレーター金属容器が飛び散り、乗員の首に刺さるなどの死傷事故が相次いでいる。

リコールはホンダ<7267.T>が2008年11月に米国で初めて実施。09年には最初の死亡事故が発生し、その後、関連事故による死者は米国で11人、マレーシアなども含む海外全体で17人、負傷者は世界で180人超に上っている。事態を重く見た日米当局は、湿気を防ぐ乾燥剤を入れていないタカタ製エアバッグの搭載車両すべてのリコールを決めている。

<「乾燥剤入り」の安全性と耐用年数>

タカタは世界のエアバッグ市場のシェア約2割を占める。ホンダ、トヨタ自動車<7203.T>、独フォルクスワーゲン、独BMW、米ゼネラル・モーターズ、米フォード・モーターなど世界の車メーカー19社に問題とされるエアバッグは供給されていた。リコール対象はインフレ―ターの数で1億個超、リコール費用は1兆円以上に膨らむ見通しだ。

交換部品については、ホンダやトヨタなどは十分に確保しているが、まだ間に合っていない車メーカーもある。メーカー各社は交換部品として硝酸アンモニウム以外の火薬材料を使う他社製品を工面しているほか、一部メーカーは硝酸アンモニウムを使った乾燥剤入りのタカタ製も使っている。

タカタは15年10月末以前の受注分と交換部品としての供給が終了次第、乾燥剤の有無に関わらず硝酸アンモニウムを使うインフレーターの生産をすべて中止する計画。今のところ硝酸アンモニウム仕様であっても乾燥剤入りならば交換部品としての供給は許されている。しかし、その安全性に米当局が完全なお墨付きを与えているわけではない。

米当局は、高温多湿の地域では生産から6年、寒冷地域では25年でインフレーターの異常破裂のリスクが高まると報告している。タカタは当局の指示に従い、18年末までに解析結果をまとめ、19年末までに耐用年数と合わせて乾燥剤入りの安全性の証明を目指すが、証明できない場合は乾燥剤入りの製品もリコールになる公算が大きい。

自動車には、同じく火薬を用いる発炎筒が搭載されているが、使用期限は法律で4年と定められている。地球温暖化で日本でも高温多湿化が進む可能性もあり、自動車業界には「エアバッグも使用期限や定期的に交換するルールを決めるべきだ」との声は多い。だが、タカタや業界全体が再発防止に向けたルール作りに取り組むような動きは消費者には見えていない。

<米国外での再生手続き後の補償も不透明>

関係者によると、タカタは民事再生法の適用と米自動車部品メーカーのキー・セーフティ・システムズ(KSS)の資金支援を受けて再建を目指す。再建策ではKSSがタカタの主要事業を買い取り、新会社を設立する一方、リコール債務などの負債を担う旧会社はいずれ清算する方針。民事再生手続き後に事故が起きた場合、米国では司法省との合意により設立する補償基金が対応するとされるが、米国以外で起きた場合は誰が補償に対応するのかも不透明だ。

車メーカー各社はリコールを急ぐよう消費者に呼びかけているが、日本でのリコール対象車の改修率は5月末時点で約73%。日本に比べて車検制度の緩い米国では約35%と一段と低い。

米国では4月、リコール済み車両にも関わらず、修理業者が廃車から転用したとみられる欠陥エアバッグ部品を流用して修理したため、異常破裂して運転手が負傷する事故が起きた。消費者の安全を脅かす事態がなお広がりを見せる中、会社再建が先行するタカタ問題が完全決着する道のりは険しそうだ。

(白木真紀 編集:北松克朗)

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