閉店に追い込まれた温浴施設が若者から大人気になった理由おふろcafe誕生秘話(3/4 ページ)

» 2017年06月29日 06時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

目指したのは家のように過ごせる温浴施設

 ターゲットは女性の中でも若年層に絞った。理由としては、施設の近隣には若い女性向けのお店が少なかったこと。また、前述したように駐車場が狭かったため、クルマを利用しない層を狙う必要があった。そして、「新しいブランドを広げていくためにも、発信力のある若い女性をターゲットにしたかったから」という。

 「まずは、大型商業施設などに足を運び、女性の休日の過ごし方を徹底的に研究しましたね。その中で見えてきたのが、多くの女性がカフェで雑談を楽しんでいる姿です。私がカフェ好きということも理由の1つではありますが、ここから『お風呂×カフェ』というコンセプトを考え出しました。具体的には、コーヒーサーバーなどを設置して、お風呂上りに友達とお茶をできるようにしようと決めました」

 しかし、単に温浴施設にカフェの要素を持ち込むだけでは、女性にウケる空間は作れない。山崎社長は「居心地良さ」にとことんこだわった。

 「とにかく家っぽくしたいと考えました。私が小さかったころは友達の家に泊まりに行って夜通しで遊ぶということもありましたが、今はそうした機会が少なくなってきている印象があります。ですから、友達の家に泊まりに行くような空間をおふろcafe utataneが提供したいと思いました」

photo 「居心地良さ」にとことんこだわった

 例えば、ハンモックで寝ながら小説やマンガを読めたり、トランプ、ボードゲーム、PCも自由に使えるようにした。おなかが空いたらレストランでご飯も食べれるほか、ラウンジでお酒を飲むこともできる。また、本棚にある本はあえて雑に置くなど、“整え過ぎない”ようにした。まるで自宅のように、リラックスして長くいられる環境を作るためだ。

 「改装前の施設では、お風呂から上がったらすぐに帰宅するユーザーが多く、平均滞在時間は1〜2時間でした。しかし、ゆっくりくつろげる空間を作ったことで、おふろcafe utataneの平均滞在時間は6〜7時間にまで伸びたのです。これによって客単価も上がりました」

 価格は丸1日(午前10時〜翌日午前9時)いても2100円。投資を共有スペース部分に絞ったことで、改装コストを安く抑えることができ、その分を価格に還元できた。改装後、ユーザーの7割が女性となり、10〜20代のデートスポットとしても利用されるようになった。

 「厳しい状況だったからこそ、出てきたアイデアでした。結果としては、おふろcafe utataneの売り上げは改装前の2〜3倍に増えました」

photo ハンモックで寝ながら小説や漫画を読める
photo 友達の家に泊まりに行くような空間を意識したという

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