東急の“時差Biz特急” 多摩田園都市通過の本気度杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2017年06月30日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

東京メトロも対応

 時差Bizライナーは渋谷に到着すると、そのまま半蔵門線に直通する。ここで折り返して、乗客を降ろしてしまうと渋谷駅が次の列車待ちの乗客であふれる。「乗り継ぐくらいならあとから来る直通に乗ったほうがいい」となって、時差Bizライナーを走らせる意味がない。そこで直通するわけだが、当然ながら東京メトロ半蔵門線に影響が出る。

 東京メトロの報道資料によると、時差Bizライナーはそのまま1本増発の形で半蔵門線を走る。渋谷発は6時44分。各駅に停車して、押上に7時15分着。東急電鉄の報道資料にも押上行きとなっており、東武鉄道に増発の報道資料はないため、この増発電車は押上駅で折り返しだ。

 その押上駅折り返し電車についても、東京メトロの報道資料に明記されている。「7時台の半蔵門発長津田行列車1本を押上発に変更します」とあって、一見すると無関係な延長運転に感じるけれど、これは時差Bizライナーの折り返しのために設定された。もともと半蔵門始発の渋谷方面行きは、平日の朝に1本だけ存在する珍しい電車だ。普段は渋谷発7時28分、半蔵門着7時37分の電車で到着し、いったん九段下方面の引き上げ線に入り、折り返す形になる。

photo 東急田園都市線と東京メトロ半蔵門線の直通ダイヤ。黒い点線が半蔵門発電車の押上始発化部分(列車ダイヤ描画ソフトOuDiaにて筆者作成)

 折り返しの相棒が時差Bizライナーの帰り便になってしまったから、半蔵門着7時37分の電車の帰りが気になる。減便するなら直通元の東急線内も減便となり報道資料に明記されるはず。折り返し時間を長く取って、別の時間帯に半蔵門始発が設定されるなら、その増発も東京メトロの報道資料にあるはず。どちらにも記述がないから、混雑を避けた時間帯に回送電車として渋谷方面に戻ると思われる。そうなると、時差Bizライナーの増発の裏で無駄な回送電車が1本できたことになる。もったいないから増発した方が良さそうだ。しかし、途中駅で客扱いすると所要時間が延びて、前後の列車に影響してしまう。つらいところだ。

 東京メトロの報道資料は半蔵門線の他に東西線の記述がある。西船橋〜九段下に1往復、妙典発九段下行き片道1本。いまのところ直通先の東葉高速鉄道とJR総武線には増発の発表がないため、東西線内のみの設定のようだ。九段下駅の発着時刻は午前6時台で、時差Bizライナーの到着より1時間ほど前である。

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